■選手感想

【立命館大学】

武田 俊平
相手は過去0−2と分が悪い桐山さんとの対戦になった。2試合の戦型は角換わり、雁木右四間でどちらとも相手に受けきられたので今回は相手に攻めさせてカウンタ−を狙う方針でいくことにした。先手番だったので相掛かり2八飛や矢倉などいろいろ考えたが、カウンタ−を狙う方針なら四間飛車の鈴木システム(大介の方だよ)がいいと判断した。桐山さんも当然穴熊に入り、銀冠対居飛穴の戦いになった。

棋譜の解説  
(31手目▲6六銀) 形を決めすぎの感があるが△4五歩の筋もいずれ生じるので仕方なしか。本譜の桐山さんの構想にはびっくりした。
(39手目▲2六歩) ▲5五歩は△5二飛で▲5四歩△同銀▲5五歩に△6六角の強襲で自信なし。
(49手目▲7五歩) 25分の長考で指した手。第1感は▲6三歩だったが△同飛▲5五角に△5三金!で自信なかった。以下▲6四角△同金▲5二銀は攻めが薄いし△8四の角がいつでも切れるのでさすがにダメだろう。
▲7五歩に△同角なら角を95に出る味が残るし、66に銀が出たとき角に当たる。桐山さんも同意見だった。私のほうが作戦負けであろう。
(58手目△9五角) さすがに△5七桂成は攻めが切れるだろう。持ち時間も長いし受けきる自信があった。
(64手目△6一飛) △7九銀は左桂を捌いたことになりさすがにできないと思った。しかし冷静にみると十分な手ではある。こっちも▲2五歩からガンガン攻める展開にするしかないが。
(72手目△3二金寄) △3三金の1手だと思う。本譜は角筋のラインが気になる展開に形勢は少し悪いぐらいか。
(78手目△2四銀) △1四銀の1手であった。それならその後の▲2三歩の効果が薄かった。このあたりから桐山さんは秒読み。
(98手目△5一飛) 敗着だと思う。穴熊らしく△8八飛成として以下▲6一桂成に△6七歩成に▲6二飛に△4二歩で苦しいかもしれない。と金を抜くのは△4九角がある。▲6六角と攻防に角が使える展開となっては逆転。そのあとの△4九角は▲4二金をうっかりした手でまだしも△4二歩と我慢するところか。
(113手目▲4五桂) 詰めろでないが△7六馬が動くと▲7三桂がピッタリ働いて詰んでしまう。正直ついていると思った。
(127手目▲7四角) やっと勝ちを確信。詰めろ逃れの王手でぴったりである。

序盤はひどすぎたが中終盤から自分の持ち味が出せたと思う。しかし90分の内容としてはまだまだ不満足であり今後プロの公式戦で指す機会ができたらもっと序盤を強化したい。



福井 善博
副将戦を振り返ってみます。(棋譜はこちら
副将に起用された僕の対戦相手は学生将棋出身の鈴木貴幸さんでした。数々の実績を持つ強豪が相手で、なおかつ、90分の持ち時間という長丁場でしっかりした将棋がさせるか不安でしたが、長い持ち時間を利用して慎重に指そうと思いました。
本局では、僕の四間飛車に対し、鈴木さんの左美濃という展開になりました。割と早い段階で玉を入城させており、藤井システムが使えなかったので、代用策として、△6五歩の位取りに高美濃+引き角を採用しましたが、△6五歩▲7七銀の交換は形の決めすぎで、もっと後の方がよかったかもしれません。
さて、無難に進めてきたつもりでしたが、僕の△6三金を見ていきなり、▲9五歩△同歩▲9三歩と仕掛けてこられました。対して△同香は、やはり▲3三飛成〜▲4八角打が気になりました。
以下は△7一玉▲9三角成△6二玉と左辺に泳ぎだすことになりそうですが、そうなると一段金がよく利いており、せっかくの二枚の飛車が使えず、敵玉が広くなり、駒損、とマイナス材料ばかり、揃っていそうなので、本譜では△3四歩と飛車切りを防ぎました。
以下は▲9五歩香△8四歩▲同角△8三銀▲9二歩成△同香▲同香成△同玉▲5七角△8四歩となんとか収めることが出来ました。
ただ、△8三銀では力強く△8三玉と上がって上部開拓を目指す方がよかったかもしれません。この後は▲2八飛△2二飛▲2七香と一転して2筋を攻めてこられましたが、一見、重そうな攻めで、ありがたいと感じていたのですが、以下△3五歩▲同角△4二角▲2四歩△同歩▲同角△6四角▲4六角と進み綺麗に捌かせてしまいました。 やはり、2筋は極力無視するべきで▲2四歩に対しては△3二飛やこの少し前では△8二玉と玉を戻す前に△4二角として△6四角の牽制を早めに見せておくほうがよかったようです。この2筋の攻めに対しては、深く考えずにあっさり指してしまい、粘ることも出来ずに簡単に土俵を割ってしまったので、とても悔いの残る敗戦になってしまいました。


加藤 幸男
オーダー交換の結果、相手は渡辺健弥さんに決った。今回最も当たりたかった人だけにより一層気合が入った。大将戦の振り駒の結果、先手番に。正直なところ、後手番で十八番のヒネリ飛車を受けてみたかったので少し残念だった。
戦型は渡辺さんの中飛車。(棋譜はこちら) これには意表を突かれたがプロの竜王戦で岡崎プロに同じ将棋を指されていたことを思い出して納得。それに対しこちらはセオリー通り穴熊を目指した。
穴熊VS風車の普通の将棋になると思ったその矢先・・・ △22飛!指された瞬間、意味が全くわからなかった。そして読んでみても・・・正直ありがたいと思った。今思うとこの精神状態がいけなかった。それが、▲9六歩という手につながった。この手は、端に争点を作ってしまっただけの手でパスした方がいいほどの大悪手だった。ここでは普通に▲6八角と指しておくところだったと思う。
これに乗じて渡辺さんは機敏に動く。47手目▲2六飛はしょうがないとはいえ涙の出るようなきかされである。△6五歩で完全にしびれてしまった。6筋に位を取られ、△6四角を実現されては全く勝負どころがなくなってしまうので銀桂交換を甘受することに。ここでは指しているだけの将棋になってしまった。続く△9五歩も好手。ここでは△6二金もあるがこの方が渡辺さんらしい。これで、いっぺんに先手玉が見える形になった。
しかし、△4八銀は少し重かったように思う。ここでは△4五桂が好手。ここで、桂馬を手持ちにされ、角を楽にされたらはっきり負けだった。65手目では▲2六飛の方が後に出てくる△4六角がない分得と感想戦に出たが、それでは、飛車が全く働かなくなるので違う指し方をされて負けだと思う。△4六角とされた局面がこちらとしては最後のチャンス。とりあえず、歩を成り捨てて形を乱してから▲6四歩で局面を複雑にして相手の応手を待つことに。78手目△7三銀が先手の食いつきを許した緩手。ここでは平凡に飛車をとられていたら負けだった。本譜は▲6四桂が入って勝負形。これに対し玉が逃げるのは▲3一角が厳しい。▲6五金と出てこの将棋で初めて手応えを感じた。実際にはまだ難しかったようだが、穴熊の強みを生かし寄せきることが出来た。

今回で日本選手権は2回目となる。社会人日本一と学生日本一が対戦する夢の舞台。その中に自分がいることができるのは本当に幸せなことである。
今回、自分自身勝つには勝ったが、この内容では学生代表として情けない。これからの課題を残した一局となった。また、チームは惜しくも負けてしまった。この点は来年への宿題が出来たと思っている。来年もこの舞台に学生代表として立ち、日本一になれるよう頑張っていきたい。
最後に、毎年このような大会を開いてくださるリコーの方々にこの場を借りて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。



熊野 剛
オーダー表交換が終わり、私の前に座ったのは池田 将さん。充分過ぎる相手である。(棋譜はこちら


39手目の▲1六歩は少しありがたい気がした。実際に本譜もこの一手は活きない展開になった。そして、42手目△5五歩と仕掛けた。▲同歩に、△同銀か△6五歩か迷った。迷ったあげく、一歩手持ちにして銀を6六〜5七〜5六と立て直す順の方が上と判断したので△同銀を選択した。しかし、ここでは△6五歩と戦線拡大する手も大いにあったと思う。どちらも一局だと思う。
54手目、△5四銀と立て直した所ではまずまずの分かれだと思っていたのだが、次の▲5五歩△同銀▲4五桂の順を軽視していた。相手の桂だけが捌きやすい格好となってしまった。さらに、63手目▲2三飛成りとじっと成られた。ここで相手に迫る手が無ければ悪いと思った。・・・無かった。その結果が△5二歩である。ここでは不利だと思う。
67手目、私は▲3二龍を本線に読んでいた。そう指されたらノータイムで△4ニ金と打ち、お互いに玉の見えにくい展開にしようとした。しかし、相手の指し手は▲3四龍。どっしりと腰のすわった手を指されてしまった。やはり悪い・・。
74手目、私は△8八角成と決死の勝負手を放った。▲同玉△6七銀ともたれかかった。おそらく▲7七角と逃げてくると思ったが、指し手は▲8六桂だった。正直チャンスが来たと思った。私は角を取って△8五桂と跳ねた。ここではかなりいい勝負になったと思っていた。しかし、またまた腰のすわった手を指されてしまった。
▲5三銀打。おそらく「最強の受け」だと思う。この手に対して私は△2八角と最悪の手を指してしまった。▲3三角と打ち返され、たちまちこちらの攻めが切れてしまった。△2八角のところ、△4七金と俗手で迫る方がまだ勝負だった。▲3三角と打たれてからは、私の攻めはすべて切れ筋になってしまった。以下も丁寧に指されきっちり負かされてしまった。

社会人になってからも、いつかまたどこかで対戦したいと思える相手だった。



君島 俊介
序盤の出だしは渡辺さん得意の横歩3三桂を避けながら自分が得意の角換わりを目指す作戦。(棋譜はこちら
去年の3月の春季職団戦で日レスの木村秀利さんに横歩3三桂で勝っているのを見ているので避けるのが賢明と考えていた。
11手目の▲1六歩は間合いを計るのと棒銀対策。▲2五歩と飛先を決めてしまっているのでここら辺から神経を使わなければならない。仮に▲1六歩に△1四歩▲9六歩△9四歩▲4六歩となれば、単に▲4六歩とするよりも棒銀を受けやすい。渡辺さんは棒銀にする気はなかったようですぐに△6四歩と突いて腰掛銀を目指してきたので、▲1六歩に費やした時間が少し無駄になってしまった。
25手目の▲3六歩は指した後に気がついたが疑問手と思う。ここは▲3三角成とするしかなかった。△8四歩でおそらく△6五銀とぶつけられていたら作戦負けになっていたように思う。角銀を持ち合うと先手のほうが陣形をまとめにくい。歩を多く突いているので駒を打たれないように気をつけないといけないから。しかし、▲3三角成とするしかないのではここにいたるまでの手順に少し問題があるのかも知れない。
△8四歩は▲3六歩をとがめに行っていないのでありがたかった。さらにその後の△7四歩は疑問手。ここは普通に△8八角成とするところ。以下▲同金に△3三銀▲6六歩が予定の手順でこれだと6筋に位を張れないのが不満だったそうだが、△3三銀で△6五歩が成立している(▲2四歩は△3三角の筋がある)ので、6筋に位を張るならこうするべきでそれなら一局の将棋。▲7九玉で手得できる形になり少し得した。
ただ32手目の△3一玉で△8八角成▲同玉△3三銀とされたときに手得の活かし方が良く分からなかった。コビンが開いているし▲7七銀とした形も△8五桂とされる展開のとき銀に当たるので味が悪そうだ。馬鹿馬鹿しいが▲7九玉と戻るようなことも考えていた。
熟考して仕掛けた▲4五銀は手ごたえ十分で作戦勝ちを意識した。
40手目の△3七角では△5五角も考えられるが普通に▲7七銀△4六角▲2九飛として▲7一銀、▲7一角、▲6一角の筋があり先手が指せるだろう。
41手目の▲2七飛はやや疑問だった。普通に▲2九飛として以下△4四銀(△5四銀)に▲4七金△1九角成▲9一角成△同飛▲1九飛△4五銀▲8二角△9二飛▲7一角成で▲8一馬が受からず優勢だった。考えていた手を指さなかったのは我ながら不可解で情けない。
しかし実はまだ先手が優勢。▲8一馬が後の△4一香を見落とした敗着。ここでは▲9五歩(!)があった。△同歩なら▲5三桂成〜▲9四歩で他も確実に8三の銀で飛車が取れるので壁銀の後手はひとたまりもなかった。この手は渡辺さんから指摘され感心した。玉側の端攻めはまったく考えなかった。
△4一香と先に打たれて攻め手がなくなってしまった。突然敗勢になっているので愕然とした。以下は勝負所もなく、食いついて見せ場を作るのが精一杯だった。
団体戦でこういう将棋を負けてはいけない。非常に自分自身が腹立たしいが、この将棋を自戒の一局としてこれからの将棋に活かしていきたいと思う。


鈴木 雄貴
青柳さんとは初対局でしたが、居飛車党で対四間飛車には居飛穴が多いという情報があったので、先手がほしいと思っていました。しかし、後手になったので4四銀型を目指す予定ではありませんでした。序盤で、△9四歩に対して▲9六歩と受けてきたので4四銀型を目指すことにしました。(棋譜はこちら)勝敗はともかく、自分の研究が生きる将棋になったのでほっとしたのもつかの間、▲2六飛と浮かれてよくわからなくなりましたが、自然に銀冠に組めたので作戦勝ちを意識しました。
序盤で印象に残っているのは先手が四筋の歩を交換した後に指した△1四歩です。間合いをはかる好手だったと思います。先手は▲2九飛とするくらい(次に▲4九飛が狙い)ですが、そこで△3五歩〜△5五歩とし掛け好調です。
中盤の▲3五歩では、▲5五銀△5四歩▲4四銀以下の順を中心に読んで以ましたが、さすがに後手が勝ちだったようです。
そして、△4七歩と垂らして優勢を意識しました。この時点ですでに秒読みになっていましたが、優勢から勝勢に拡大していくことができました。特に△8五歩は力を溜める好手で、▲1一角成に対する△3三桂は振り飛車としては会心のさばきです。△8七歩と打ちこんで、あとは寄せるだけでしたが、▲7八銀の局面で△4六角〜△5七角は▲6八角で受かっていると思い、決断できませんでした。▲6八角には△同角成▲同金△5五角で詰めろ飛車取りがかかり、決まりでした。その順を秒読み下で発見できなかったのが敗因です。それ以降は流れが完全に逆転し、勝てない将棋でした。
ただ、全体を通しては、持ち時間の使い方も含めてなかなかいい将棋を指せたと思います。


桜井 英孝
会場に到着し、オーダー表交換をしてみると僕の相手は上岡社長だった。誰であろうと全力を尽くすのみなのだが、この日は前日からあまり眠れず、朝から腹痛をおこすという心身共に最悪の調子だったために、集中力がもつかどうか不安だった。(団体戦の前の日は大抵こんなもんです)
試合が始まり先手番となる。(棋譜はこちら
やはり始まってもしばらくは集中できなかったので失礼ながら周りを見渡しながら指していた。そうしているうちに相手の穴熊が完成するくらいには少しマシな状態で盤に向かうことができた。局面はその時点ではまずまず満足の序盤だったが、完全に組みあがったところではハッキリ作戦勝ちになっていた。
こちらだけ指す手が残っていたのでじっとしていたほうがよかったのかもしれないが、仕掛けて十分に思えたので勢いよく仕掛けた(今思えば自分らしくもう一手待ったほうがよかった)。その形勢判断は間違っていなかったと思うのだが、仕掛け直後の判断ミスによりやや細くなってしまった。千日手の権利が残っていたために良しだと思っていたのだが、あとから並べてみてもどうも千日手が最善に見えてくる。正直このわかれを選んだのは疑問だった。
それからしばらくは千日手含みの張り付きが続き、打開案を探して少し手を変えてみたのだがそれが大悪手で完全に攻めが切れてしまった。正確には切れたというよりかは、攻めると渡した駒で攻めあい負けるという状態に陥った。指してから15分くらい固まってしまい、なぜこんな手を指したのかと精神的にもかなり萎えてしまった。(応援にきてくれていた人たちも青ざめていたような気がする)
しかしみんなのみている手前そんな無様なことはできないので角をただで取らせて粘りにでる。局面は角損に近くどうみても勝ち目はない。負けを意識しながら根性だけで穴熊に張り付く、しかもかなり細い攻めを。実際にも丁寧に応接されどんどん細くなっていく、相手の陣形もいつのまにか金銀が4枚も打ち付けられている上にこちらの王様はと金で迫られている、まさにどうしようもない。ここでも投了が頭をよぎったが、0.1パーセントの望みにかけて攻めを続けることにした。
それもむなしくこちらについに二手すきがかかる、しかしここでは相手の穴熊が薄くなっていたので少し怪しいかな(実際は逆転はしてなかったと思う)と思うことができるようになっていた。
そしてこちらに一手すきがかかったときに相手に細い詰めろがかかる。詰めろがかかるような形勢ではなかったために上岡さんも少し動揺されたように思えた。ここでは盤面に奇跡を起こすために相当気持ちを込めて指していた。一本道の変化なのだがわざと手順を変えて間違いを誘う(君島主将もいつか立将に書いていたような)。
そして実際に奇跡は起こる、この局面だけは勝ちという変化が転がり込んできた。あとから聞いた話だと上岡さんに錯覚があったようだ。このときだけはさすがに勝ちを意識した。
簡単な必死が見えたために詰みを一度逃してしまったが、もう負けはない、二度目に少し迷ったが詰ましにいった。対局が終了した後は安堵感と王座戦以上の疲労感が襲ってきてフラフラになった。感想戦を終わらせてチームの結果を聞くと3-4で負けとのことだった。
そのときはフラフラで何も考えることができなかったが、今は社会人の将棋のレベルの高さを再認識させられる。チームに勝てる要素もあったとは思うのだがやはり不利感は否めない。来年にはよいチームを作り上げこの場所にもどってきたい、団体としても個人としても。
長文失礼いたしました、よい経験をさせていただいたことをこの場を借りて皆様にお礼申し上げます。


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