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第22回リコー杯アマチュア将棋団体日本選手権

〜〜〜東京大学が史上初の三連覇〜〜〜

年月日:2010年2月27日(土)

場所:東京都大田区「リコー大森会館」

主催:株式会社 リコー

後援:日本将棋連盟、朝日新聞社、週刊将棋、全日本学生将棋連盟

レポーター:馬上 勇人

 社会人と学生のナンバーワンチーム(職団戦、学生王座戦の成績で代表決定)が7人対抗団体日本一を決める第22回リコー杯アマチュア将棋団体日本選手権(主催・リコー 後援 日本将棋連盟、朝日新聞社、週刊将棋、全日本学生将棋連盟)がNECと東京大学の組み合わせで2010年2月27日に東京都大田区「リコー大森会館」で行われた。

【第22回リコー杯アマチュア将棋団体日本選手権】

 「東京大学の史上初の三連覇なるか?NECの対東大戦三度目の正直なるか?」に注目が集まった本大会。社会人代表は職団体戦春準優勝、秋優勝のNEC(2年ぶり4回目)。学生代表は冬の王座戦を全勝優勝した東京大学(3年連続11回目)の対戦となった。今年は深浦康市王位、瀬川晶司四段(NEC所属)、中村桃子女流1級をお招きし併設会場にて解説会を実施。リコー将棋部Webサイトから棋譜中継、ブログ・Twitterを使ってのリポートを行い多くのお客様に観戦して頂いた。
 開会式、中立な立場であるはずの瀬川四段がNECのバッチをかざし「今日は、NECの応援にきました。」と堂々の宣言。瀬川四段は過去に2度日本選手権に出場しているが未勝利。そして、プロになってからもNECの応援に駆けつけているが優勝の瞬間に立ち会えたことがない。元同僚達に向かっての熱いエールだった。
 だが、この一言が東大の闘志に火をつけることになる。
 中村女流1級の振り駒の結果、東京大学の奇数先に決まった。
 当たりはNEC−東京大学の順で大将から清水上徹―武内譲司、加藤幸男―重野和彦、佐藤彰司−木口 翔太郎、加藤徹―谷崎生磨、宮原洋介―入江明、林隆弘―鈴木 恵介、川村 工―矢吹 隆朗
 対局が終了した順番に振り返ってみたい。

【四将戦】

 はじめに終わったのが加藤徹―谷崎戦。加藤さんは団体戦のポイントゲッター。職団戦でも活躍しチームを日本選手権へと導いた。谷崎さんは東大のエースで今年度の学生王将。
 先手加藤さんの▲7六歩に谷崎くんは△4四歩!昨年の角頭歩戦法に引き続き今年も温めていた秘策を披露した。対して加藤さんは冷静に▲7七角。以下△4五歩▲7八銀△4二飛▲4八飛と進むが▲3九銀が使いづらく谷崎くんの作戦勝ちに。
 苦戦の加藤さんが大捌きにでるが谷崎くんは冷静に対応して優勢を拡大し、局面は最終盤。

 ここで△8七香車が決め手。△1三の角が▲6八金を睨んでいるため▲同金とは取れない。
 仕方なく▲同玉だが、△8九竜▲8八香△9九竜と玉を追い詰め確実に寄せきった。

【三将戦】

 佐藤さんは日本選手権初参戦。事前に日本選手権と同じ条件(75分)で特訓するなどこの大会に向けて準備をしてきた。木口くんは昨年に引き続いての登場。女性部員からはイケメンとよばれるなど人気者だ。
 木口くんの誘導で相掛かりになり図は佐藤さんが横歩を狙って再度△8六飛と指した局面。

 ここから▲8七歩△7六飛▲2二角成△同銀▲7七歩△7五飛▲8二角と進む。▲8二角で後手は香車取りが受からず苦戦だ。
 以下も緩みなく優位を拡大した木口くんがそのまま押し切った。
 これで東大の2−0。

【七将戦】

 川村さんは冬に四日市で行われた学生王座戦を観戦し日本選手権に備えてきた。矢吹くんは一回生ながら中終盤に力を発揮する期待のホープ。瀬川四段によると「名著:泣き虫しょったんの奇跡」のタイトル名は矢吹くんのお父さんがつけてくださったそうだ。
 一手損角替わりで始まった本局は矢吹くんが右玉から力強い指し回しを見せ、この局面を迎える。

 ここで△3三歩が冷静な一着。以下、▲同歩成△同銀▲3七飛車△3四歩▲5六銀△4四金▲8四歩に△8五桂▲8八角△8六歩▲同銀△8七歩と攻めがクリーンヒットし、最後は綺麗な即詰みに討ち取った。
 これで東京大学の3−0。このまま決まってしまうのか?

【六将戦】

 林さんはかつて全国大会で何度も優勝したトップアマ。プロの公式戦でも当時の阿久津四段(現七段)、伊奈四段(現六段)に勝利するなど、そのセンスあふれる指し手はプロをも唸らせるほどだった。だが日本選手権では目下5連敗中。
 鈴木くんは来年度の主将。鈴木くんは筆者の高校の後輩(静岡高校)で同じ静岡県出身の林さんとは同郷対決になる。
 相矢倉となった本局は林さんが機敏な動きで作戦勝ちをおさめる。苦しくなった鈴木くんが勝負手を放つが桂損となり、この局面を迎える。

 ここで林さんの一手は▲2四桂。林さんと親交のある深浦王位、瀬川四段が解説会場で頭を抱える。「ここに手がいくようではダメだ。」
 以下、△2一飛車▲2五歩△4二金▲1四歩△同歩▲4五歩△同桂▲7七桂△8一飛。△2一飛車が上手い返し技で、△4二金となってみると打った桂馬がまるで使えていない。
 この後、林さんは懸命に追い込むが鈴木くんは正確に対応し押しきった。
 これで4−0となり、早くも東京大学の優勝が決まった。

【大将戦】

 清水上さんは説明不要のアマチュアトップでNECの主将を務める。今年度の朝日オープンではアマチュア史上初の一次予選突破を果たした。武内くんは東大主将で団体戦29連勝中と抜群の安定感を誇る。
 相振り飛車で始まった本局は、清水上さんのやや強引な仕掛けを武内くんが手厚く受ける展開に。清水上さんが細い攻めをうまくつなぎ迎えたのがこの局面。

 ここで△3五歩▲同玉△3七竜▲3六歩に△3三歩と打てば綺麗に決まっていた。▲同桂成は△2六竜までだ。
 本譜は△3五歩▲同玉に△3三歩と指してしまったため、▲3六玉△2五香▲3七歩△2六香▲4七玉△2七香成▲6三桂成△3七成香▲5八玉△2八竜▲3八歩△同成香▲6九玉と進み先手が優勢に。
 だが、ここからが朝日アマ名人。粘り強い指し回しでプレッシャーをかけ続け、最後は逆転で勝利した。これでNECは待望の一勝。

【五将戦】

 宮原さんはNEC期待の若手で、立命館大学在籍時に日本選手権の出場経験がある。入江くんは一回生ながら学生棋界で活躍し3月に行われる朝日アマ名人戦の地区代表にもなっている。
 千日手指し直しとなった本局は入江くんのゴキゲン中飛車に宮原さんが丸山ワクチンで対抗。「事前に研究会で検討した形になった。」という宮原さんが作戦勝ちになる。

 局面は△4二銀と引いた局面だが、ここで▲4六角が機敏な一着。△3四飛▲5五銀△5三銀に▲3六歩がまた鋭い。△同歩には▲3五歩△3三飛▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩に▲3四歩から飛車交換になり△3二金と△5三銀が浮いている後手は支えきれない。
 この後もリードを守った宮原さんが押し切った。

【副将戦】

 加藤幸男さんはこの一戦に懸けていた。清水上さんと並ぶNECの2枚看板でありながら過去2度の東大戦に破れている。ここで負けるようではもはや加藤幸男ではない。
 そして、重野くんもこの戦いに懸けていた。過去2度出場した日本選手権では敗戦。チームは勝ったもののまだ未勝利だ。
 お互いの気合がぶつかるこの一戦は、重野くんの三間飛車に加藤さんが居飛車穴熊で対抗。

 △4一歩△5一香△5二歩が激戦の跡を物語っている。ここで気合を込めて指した加藤さんの一手は▲9二歩。これで重野くんは痺れた。
 以下、△8二玉▲9一歩成△同玉▲7二角△7一金▲9四角成△9三歩▲8四馬△5八竜▲5六歩△8二銀▲3二竜△8三歩に▲6六馬と引きつけ不敗の体制を築きあげる。
 この後、加藤さんは▲4二歩からの攻めを間に合わせ勝利。双方一分将棋の激闘だった。

【終わりに】

 こうして4−3で東京大学が史上初の三連覇を達成した。
 社会人、学生それぞれで代表になるのが大変な中でこの成績は素晴らしいの一言に尽きる。今回も清水上さん、加藤幸男さんを中心に強豪揃いのNECを相手に勝負に対する気迫とチームワークで栄冠を勝ちとった。これで社会人対学生の対戦成績は11勝11敗の五分となった。
 最後になりましたが、選手の皆様、応援してくれた皆様、日本選手権を取り上げて頂きましたマスコミの皆様、ありがとうございました。

【プロ棋士からの感想】

深浦王位

 団体戦を初めて観戦しましたが、非常に緊迫感があって良いものを見させていただきました。東大がストレートで勝利を決めたのはびっくりしました。勝負に対する集中力、執念が印象的でした。

瀬川四段

 東大の皆さん優勝おめでとうございます。NECの皆さんも浅田真央さんのように胸を張っての銀メダルだと思います。

中村女流1級

 選手の皆さん、運営された皆さんお疲れさまでした。NECの負けが決まった時の瀬川さんのテンションの下がり方がおもしろかったです。

 第22回の結果(2010年2月27日)

       【NEC】 3 − 4  【東京大学】
 大 将    ▽ 清水上 徹 ○ − ●  ▲ 武内 譲司
 副 将    ▲ 加藤 幸男 ○ − ●  ▽ 重野 和彦
 三 将    ▽ 佐藤 彰司 ● − ○  ▲ 木口 翔太郎
 四 将    ▲ 加藤 徹  ● − ○  ▽ 谷崎 生磨
 五 将    ▲ 宮原 洋介 ○ − ●  ▽ 入江 明
 六 将    ▲ 林 隆弘  ● − ○  ▽ 鈴木 恵介
 七 将    ▲ 川村 工  ● − ○  ▽ 矢吹 隆朗
 過去の結果
  社会人代表 勝敗 学生代表
第1回 リコー −1 東京大学
第2回 リコー −2 早稲田大学
第3回 東芝 3− 京都大学
第4回 リコー −2 東京大学
第5回 リコー −3 東京大学
第6回 アルゴリズム研究所 3− 東京大学
第7回 富士通 −3 東京大学
第8回 リコー −2 東京大学
第9回 プロセス資材 3− 早稲田大学
第10回 リコー 3− 東京大学
第11回 リコー −2 早稲田大学
第12回 リコー 3− 慶應義塾大学
第13回 プロセス資材 2− 立命館大学
第14回 ジュポン化粧品 −3 明治大学
第15回 ジュポン化粧品 −3 立命館大学
第16回 日本レストランシステム −2 立命館大学
第17回 NEC −2 立命館大学
第18回 NEC 2− 東京大学
第19回 リコー 3− 立命館大学
第20回 NEC 2− 東京大学
第21回 リコー 2− 東京大学
第22回 NEC 3− 東京大学
11−11

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