イベント・レポート

第16回アマチュア将棋団体日本選手権

〜〜〜日本レストランシステム、バレンタイン決戦を制す〜〜〜

年月日:2004年2月14日(土)

場所:東京都大田区「(株)リコー・大森年金会館」

主催:(株)リコー、全日本学生将棋連盟

後援:週刊将棋

(敬称略)

リポータ:馬上 勇人

 社会人と学生のナンバーワンチーム(職団戦、学生王座戦の成績)が7人対抗で団体日本一を決める第16回アマチュア将棋団体日本選手権(主催・リコー、全日本学生将棋連盟、後援・週刊将棋)は日本レストランシステムと立命館大学の組み合わせで2月14日に東京都大田区「リコー大森年金会館」で行われ、日本レストランシステムが4勝2敗(1千日手引き分け)で勝ち初優勝を飾った。リポーターはリコー将棋部馬上勇人。

 今年で16回目を迎える本大会。ここまで社会人代表9勝、学生代表が6勝となっている。今年の社会人代表は春の職団戦優勝、秋3位の好成績を収めた日本レストランシステム。お馴染みとなったグレーのブレザーの襟元には金色の星2つが凛々と輝く。この星の数は職団戦優勝の数を表す。全国でも屈指の強豪が揃い、本大会の前日にもチーム内で研究会を行い万全の体制を築いてきた。本大会、初出場だ。
 学生代表は昨年に引き続き冬の学生王座戦を連覇した立命館大学。今年度の学生タイトルを総なめにした学生NO.1の加藤幸男君、主将君島俊介君を中心に個々の技術と抜群のチームワークを武器に学生棋界をリードする。今大会にも選手の他10人もの応援団が関西から上京し、選手に熱い応援を送る。余談だが、この日はバレンタインということもあり対局の開始前にNHK講座の聞き手で活躍の石内奈々絵さんら女性部員から選手に手作りチョコが贈られたようだ。(羨ましいが、本当に余談だ…。)
 当たりは日本レストランシステム―立命館の順で大将から秋山太郎―加藤幸男、信沢英明―山中恵介、今泉健司―鈴木雄貴、石井豊―君島俊介、鰐淵啓史―奥村竜馬、木村秀利―宮原洋介、永田圭一郎―福井善博(敬称略)。この熱戦の模様を終わった順に振り返ってみたい。

【木村さん、飛車を封じ込めて先勝】

 まずは6将戦。「こんなに長い持ち時間(90分)は、朝日オープンの南九段戦以来です。」と語っていた木村さんと将棋大好きオーラを放つ一回生、宮原君との戦い。次の木村さんの一手が、気が付きにくい。△4八金▲1八飛△4七金▲7五銀△7三角▲5五歩△3八歩。△4八金は打ちづらいが最終手△3八歩の局面は先手の飛車が封じ込められ△3九歩成を見せられた先手は忙しい。以下、宮原君も手段を尽くして攻めるが木村さんの冷静な指しまわしの前に攻めが途切れてしまい木村さんが勝利した。

【鰐淵さん、最後に間違え撃沈】

 5将戦。鰐淵さんは私と同世代で立命館大学OBだ。学生時代はワニっ子ワールドと呼ばれる独自の陣形と豪腕で対戦相手を沈めてきた。奥村君は今年入学したばかりの立命館、期待の新人の一人だ。3手目に鰐淵君が突然、席をはずし45分もの間帰ってこない。会場がわからなくなり迷子になってしまったかと心配したが、どうやら精神統一をしていたようだ。
 相振り飛車模様から序盤早々、鰐淵君が勝負手を放ち大乱戦となったが、鰐淵君の動きに無理があったようで攻めが途切れてしまう。しかし、奥村君も対応を誤り迎えたのが図の局面。奥村君の玉は受けが利かないのでもう、詰ますしかない。
 △3九金▲2八玉△2九金▲1八玉△1九金▲同玉△6九竜▲2九桂△2八金▲同玉△3九銀と進み鰐淵君、投了。戻って△3九金に▲同玉なら際どいながらも詰まなかった。

【今泉さん、貫禄の勝利】

 3将戦は将棋・麻雀共に豪快な捌きを得意とする今泉さんと、立命館のポイントゲッター鈴木君。戦型は鈴木君の四間飛車に対して、今泉さんの居飛車穴熊。ここから▲2四歩△同歩▲6五歩△5五銀▲5六歩△6六歩▲7七金△6五桂▲5五歩△7七桂成▲同金△6七金▲5六銀打と進む。最後の▲5六銀打が今泉さんらしい手厚い一着で優位を決定づけた。次の▲4五桂が気持ち良すぎる。以下も緩みない指しまわしから快勝した。これで日本レストランシステムの2−1

【永田さん、▲5五の馬で勝負を決める】

 7将戦はしゃべるとおもしろい永田さんと見ているだけで癒される福井君との戦い。序盤、福井君に不用意な一手がでて永田さんの猛攻を浴びてしまう。ここから一気に永田さんが勝負を決定づける▲5六歩△4七歩▲同飛△5六銀▲4六飛△6七銀成▲8八角△4二飛▲1一角成△5七角▲5五馬。最終手の▲5五馬が盤上を制圧する好手。馬が手厚すぎるし、香得でもあり先手必勝形だ。以下も永田さんは確実に寄せきり貴重な3勝目をもたらした。

【山中君、会心の勝利】

 副将戦は来年度の日本レストランシステム入社が決まっている信沢さんと立命館のイケメン山中君。山中君はまだ一回生ながら非常に落ち着いている。スター性十分だ。
 ここから▲7九銀と力をため、△5七歩に▲6五歩とついたのが急所の一着。△5八歩成▲6四歩△7三金▲8五桂△6四金▲6二歩△同金▲3三歩成と流れるように攻めをつなげ勝ち切った。先手の4枚穴熊が堅すぎる。これで立命館の2―3。

【石井さん、勝利投手に!】

 4将戦。石井さんは支部名人他、空前絶後の関東学生名人5回優勝の実績を誇る。朝日オープンでプロを連覇したのは記憶に新しい。対する立命館はみんなから「きみじい」の愛称で慕われている主将の君島君。個性派揃いのこのチームを見事にまとめあげた立役者だ。
 図は大詰めの局面。ここから▲5四桂△7二金▲6二金△同金▲同桂成△9六歩と進む。最終手△9六歩が次の△9五香をみた厳しい一着で決め手になった。戻って図からは▲8四歩と突けば難解だった。こうして石井さんがチームの勝ちを決める4勝目をあげた。終了後の打ち上げの席では「私はよく勝利投手になるんだよね。」とニンマリ。

【両エース譲らず千日手に!】

 最後まで残ったのが大将戦。元奨励会三段でレーティング選手権他、数々の優勝実績を持つ秋山さん。対するは今年度すべての学生全国大会を制した学生棋界のスーパーエース、加藤君だ。力戦矢倉模様で始まったこの将棋、ハイライトは図の局面。先手玉は△9七銀以下の詰めろがかかっており、後手玉は飛車の横利きが通っており詰まない。先手が困ったようにみえるが・・。ここから▲9六香△4二金▲2三金△同金▲同歩成△同玉▲2四歩△同玉▲2一竜と進む。▲9六香が秋山さん狙いの一手だった。飛車で取ると横利きが消えるため▲3二竜以下後手玉は詰んでしまう。▲2一竜の局面は秋山さん優勢だが加藤君の粘りに誤り、結局千日手に。
 図ではアマ強豪細川大市郎さん指摘のつくったような決め手があった。▲3二竜△同玉▲4三金△2二玉▲2三金△3一玉▲9五角!最後の▲9五角が詰めろ逃れの必至でピッタリ先手勝ちだ。この時点で日本レストランシステムの優勝が決まっていたため指し直し局は行わず、千日手引き分けとなった。

 こうして、第16回日本選手権は日本レストランシステムの4勝2敗(1千日手)という結果で幕を閉じた。昨年の雪辱を期した立命館大学だったが、残念な結果となってしまった。これで社会人の10勝6敗。来年度以降の学生のがんばりに期待したい。

 第16回の結果(2004年2月14日)

 【日本レストランシステム】4 − 2 【立命館大学】
 大 将    ▲ 秋山 太郎  (千日手)▽ 加藤 幸男
 副 将    ▽ 信沢 英明  ● − ○  ▲ 山中 恵介
 三 将    ▲ 今泉 健司  ○ − ●  ▽ 鈴木 雄貴
 四 将    ▽ 石井 豊   ○ − ●  ▲ 君島 俊介
 五 将    ▲ 鰐淵 啓史  ● − ○  ▽ 奥村 龍馬
 六 将    ▽ 木村 秀利  ○ − ●  ▲ 宮原 洋介
 七 将    ▲ 永田 圭一郎 ○ − ●  ▽ 福井 善博
 過去の結果
 社会人代表勝敗学生代表
第1回リコー−1東京大学
第2回リコー−2早稲田大学
第3回東芝3−京都大学
第4回リコー−2東京大学
第5回リコー−3東京大学
第6回アルゴリズム研究所3−東京大学
第7回富士通−3東京大学
第8回リコー−2東京大学
第9回プロセス資材3−早稲田大学
第10回リコー3−東京大学
第11回リコー−2早稲田大学
第12回リコー3−慶應義塾大学
第13回プロセス資材2−立命館大学
第14回ジュポン化粧品−3明治大学
第15回ジュポン化粧品−3立命館大学
第16回日本レストランシステム−2立命館大学
10−6

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