イベント・レポート

第83回 職域団体対抗将棋大会

〜〜〜おじさんたちの甲子園〜〜〜

年月日:2002年9月29日(日)8:30〜

場所:千代田区「日本武道館」

リポータ:西田 文太郎 e-mail : buntaro.nishida@nts.ricoh.co.jp

【2000人以上の将棋大好き人間たち】

 秋のさわやかな日曜日、朝早く武道館に向かう。今日は、秋の将棋のビッグイベント、「職団戦」の日だ。春と秋の年2回、全国から将棋大好き人間が集まってくる。今回は前回に比べ、やや減って417チーム。最盛期には600チームを越えていたので、将棋の人気もかげりが見えるということか。寂しい限りだ。
 1チームは5人制なので、少なくとも2000人以上が、やってくる。いわば、おじさんたちの甲子園だ。むろん若い人もいるけれど、平均的にはおじさんたちが多いだろう。5人がチーム一丸となって、果敢に戦い、覇を競う。観客席にはミニスカートのチアガールはいない、・・・そんなことを期待しているのはたぶん私一人くらいだろう。おじさんともなれば、負けても北の丸公園の砂などは持ち帰らない。砂をかむような思いで、たんたんと、武道館に「また来るぜ」とさよならをするだけだ。
 九段下駅で地下鉄から地上に出てくると、牛が窪のお堀がある。水位は低い。真っ白な鷺が二本足で、向こうの汀を歩いている。ぴくりともしない水面には武道館のこんもりした林が逆さまに映っている。急斜面の土手には緑の草に混じって、赤い彼岸花の名残がちらほらしている。
 この日ベルリンでは高橋尚子が走る。新潟ではスプリンターズステークスで武豊のビリーヴが走る。人それぞれの日曜日。それぞれのドラマが始まる。

牛が窪

【リコー将棋部は8チーム出場】

 今年もリコー(N)7チームと東京リコー1チーム、合計8チームでの参加だ。一番上のSクラス、次のAクラス(3チーム)、飛んでD、E(2チーム)、Fクラスにでる。
 目標は、もちろんSクラスでの優勝だ。この春に準優勝しているので、ここで優勝すれば、日本一を決める全日本選手権に出場できる。今年入社した新人馬上勇人が、リコー(1)の切符を手に入れた。社団戦でも11勝1敗と好調で、一番勝ち星を稼いでいる期待の大物だ。
 私はリコー(5)でDクラスだ。今回は体調万全、心身爽快なので、優勝をしようとメンバーにメールを送ったが、誰一人として返事がこない。。。う?そうか、阿吽の呼吸というやつだな。このチームワークでがんばるぞ!

【Sクラス予選リーグ、リコー(1)通過】

 Sクラスには、戦力を強化したチームが増えて、アマ強豪がひしめいている。春優勝したジュポン化粧品(1)や、日本レストランシステム(1)は社長が先頭になって応援に駆けつけている。
 Sクラスだけは特別に8チーム制で、初めに4チームずつの総当たりリーグ戦をやり、上位2チームずつが決勝トーナメントに進み、たすきがけで準決勝を行う。
 リコー(1)は、野山知敬、瀬良司、菊田裕司、山田洋次、馬上勇人のメンバーで、優勝を狙う。予選リーグで、ジュポン化粧品(1)に敗れはしたが、強敵NECと特別区職員文化会には勝って2勝1敗で、2位で抜けた。1位はジュポン化粧品(1)。もう一つの予選リーグは日本レストランシステム(1)が3勝で1位通過、2勝1敗の毎日コミニュケーションズ(1)が2位通過となった。

【Aクラス、リコー3チーム出場】

 リコー(2)、リコー(3)と東京リコーの3チームが、Aクラスにエントリーされている。64チームでのトーナメントだ。戦力的にリコー(2)は、優勝を狙えるメンバーがそろっている。全国タイトルホルダーの佐々木修一が長い冬眠から戻ってきたのが大きい。本人はとてもとてもと言い、リハビリをかねての出場だが、周りの期待は大きい。半冬眠状態の谷川俊昭もいる。我らがライオン丸牧野正紀がいる。そして無口の桑山尚司は、一見弱そうだがどんな大物でも食えるタイプだ。口にチャックが欲しい太田博朗は、口には及ばないが腕も相当なものだ。案の定出足全員勝って5勝、二回戦も5勝と好調だ。
 東京リコーは中原、名田、星出、高橋、関の5人で、ややメンバーを落としているので、Aクラスでの優勝はきつい。一回戦で東京リコーが姿を消した。慰安戦の1回戦では勝って残留はキープした。
 リコー(3)は浜下、坂下、宮田、藤原、椋木で、優勝の可能性もないわけではない。出足、4勝1敗、二回戦も4勝1敗だ。

【Dクラス、惜しくも2回戦敗退】

 今年は、B、Cクラスにはでていない。次がDクラスで、リコー(5)が出場。竹中、平田、庭野、伊藤、西田と、手堅いメンバーだ。しかし、落とし穴は、そこら中にあるもの。・・・開始時刻になっても竹中が現れない。不戦敗覚悟で4人で臨もうとしたが、職団戦委員の吉中が気を利かせて、予備のメンバーを回してくれる。折角将棋を指しにきてもベンチを温めているだけではおもしろくないものだ。
 私は竹中の代わりに、大将席に座る。相手はTEP埼玉という。大将は、秋山さんといって、若いし、強そうだ。黒いシャツに、縁なし眼鏡がきりっとしまっている。彼が歩を5枚とって振った。歩が3枚でたので、向こうの奇数番が先手、リコーは偶数席が先手となる。私は後手となり、先手四間飛車対後手急戦となった。斜め棒銀で、突っ込んでいったが、不思議な指し回しをされて、銀が助からなくなってしまった。後で、竹中が、自分の銀の下に歩を打つのではないかという。なるほど、そういう図を時々見かける。

 しかし、銀損の代償にと金ができて、飛車の進入の可能性が高いから、悲観したものでもないと思い、と金を目一杯使う。現実に駒得をしている先手は、何とかこちらの飛車を封じ込めようとする。押さえ込まれながらも飛車を打ち込んで、勝負の形になった。敵は一直線に寄せにきた。ピンポイントでこれだけがこっちの唯一の勝ち筋というコースに入ってきた。向こうはあまりに優勢になってしまったため、トン必死をうっかりしたようだ。

 トーナメント2回戦は、厚生労働省が相手となり、今井に代わって、竹中が入った。私は副将で対局、先手番となった。角道をあけると、敵は立石流できた。ただの振り飛車と思っていたので、立石流をしようとしていることに気づくのが遅く、我流立石殺しはやりにくくなった。仕方なくアナグマにしたが、やはり作戦負けとなり、追いつめられた。仕方なく、敵の片美濃の金の頭に飛車を打つ奇策にでた。長考一番、敵は開き直って、攻めてきた。ここが勝負と考え込んだが、着手したのはわかりやすい方で、別の手を選ぶべきだった。あっさり切れ模様に陥り、挽回不能となった。チームは、2勝しかできず、ここで無念の敗退。

【Eクラス、午後に望みをつなぐ】

 リコー(4)とリコー(7)が出場。リコー(4)は、吉中、竹島、宮崎、樋口、槙というメンバーでうち3人はオールデイズ。槙さんは、今年心臓のバイパス手術をして、快復し、血の巡りがよくなって、手がよく見えると張り切っている。1回戦、2回戦を3勝2敗で、突破。
 リコー(7)は、1回戦無しの山になって10:20集合となった。水山、鈴木、安宅、土肥、小川というメンバーだ。おお、小川さん生きていたか、久しぶりだなあ。ここは水山が職団戦でのデビュー戦を飾り、チームも5人とも勝って3回戦進出となった。

【Fクラス、昇級成るか】

 リコー(6)が出場、須田、神山、豊岡、宇田津、徳増というメンバー。4勝1敗、3勝2敗と勝ち進んでいる。

【昼食休憩・・・妻たちの甲子園】

 我がリコー(5)はあえなく2回戦で敗退となったため、私は一人抜け出して急遽有楽町へ行く。長年のパートナーKのジャズダンスの発表会がある。ビギナーのためのジャズダンス教室に通い初めて、4年目だろうか。2曲踊るということで、ラメ入りのキンキラ衣装が2着、ここ数日家の壁に掛けてあった。年齢的なこともあって、いつも練習が終わって帰ってくると、ヒイヒイいっている。
 にもかかわらず、追い込みの1週間ほどは、ビデオを回しては、狭い家の中をどたばた踊っていた。夜中に下の家からクレームがくるのではないかと危惧するほどだ。
 耳にこびりついたダンス曲が始まる。ドンキホーテのテーマだという。20人ほどの仲間たちと晴れがましく踊っている。ほとんどは、20代、30代の若い女性たちだ。ぐるっとターンして、ぐらぐらっときそうなところを必死で踏みとどまっている。右へ行ったり左へ行ったりめまぐるしく動き回る。足をあげたり、腰を振ったり、手をあちこちに動かしている。先生からは笑顔で踊るようにいわれているのだが、振りを正しく踊ることだけで精一杯で、笑う余裕などないようだ。
 衣装を変えて次の曲も無事に終わった。フィニッシュのポーズをとっている。彼女たちの甲子園に拍手を送った。

【Sクラス、リコー(1)準決勝に散る】

 決勝トーナメントは、ジュポン化粧品(1)対 毎日コミュニケーションズ(1)、もう一つが日本レストランシステム(1)対 リコー(1)だ。今回は、日レスはあっちの島でダントツの強さで、1位通過だ。油断ならない。
 大将戦は山田洋次が今泉健司さんに勝ったものの、副将戦で野山知敬が東海大で活躍した石井豊さんに完敗を喫した。瀬良司が秋山太郎さんをくだしたものの、馬上勇人が木村秀利さんに負け、菊田裕司が堀井淳之さんに負けてしまった。ふーむ、厳しいなあ・・・詳細は洋次の自戦記に期待しよう。
 結局決勝戦はジュポン化粧品(1)対日本レストランシステム(1)の対決となった。そして、2階から応援している日本レストランのブレザー連中から、大声で「よし」と声が上がった。初優勝だ。第81回からSクラスに出ているので、Sクラス3期目にして栄冠を手中に収めたことになる。
 一方、予選リーグ3連敗同士の対決で、特別区職員文化会に負けた成和産業が陥落と決まった。

【Aクラス、リコー(2)優勝】

 Aクラスでは、東京リコーが慰安戦1回戦で山田敦幹さんのいる松戸市役所に勝っている。しかし残念ながら慰安戦2回戦で負けてしまった。
 リコー(3)は三回戦で日立製作所(1)に負けてしまった。
 期待のリコー(2)は3回戦富士通(1)に苦戦したものの3勝2敗で勝ち、4回戦沖電気工業(1)にもぎりぎりの勝ちとなり、この二つの勝利が結果的には大きかった。その後は準決勝、決勝と快調にとばし、優勝を決めた。まあ、このメンバーならかなり手厚い。来春はSクラスに2チームだ。

Aクラス優勝 リコー(2)

 決勝に進出した倉敷市役所は、全国的に有名な個人はいないが、岡山大学からの新戦力加入などもあり、ここまで勝ち進んだという。これこそ、将棋好きの人たちに光明を与える価値ある準優勝だ。無名でもこつこつやればここまでこられるのだ。

Aクラス準優勝 倉敷市役所(1)

【Eクラス、好成績】

 リコー(4)は、3回戦も勝ったが、4回戦で惜しくも敗れベスト8どまりとなった。吉中の4連勝が光っている。
 リコー(7)は、3回戦で敗退した。久しぶりの小川が2連勝と将棋を忘れていないことを証明していた。

【Fクラス、頑張る】

 リコー(6)は、3回戦で優勝チームと当たり、敗退となったが、須田の3連勝が輝いている。昇級は次回のお楽しみとなった。

【エピローグ】

 結局、Sクラスではベスト4に終わり、とても残念な結果だった。しかし、Aで優勝したので、来春はSクラスに二チームがでることになる。トップの10人にはいるために、いい意味での競争が起こり、いい結果が出ることを期待したい。他のチームも、皆頑張り、陥落はなかった。
 おじさん達の甲子園も無事に終わり、夜の闇に浮かぶ武道館に別れを告げた。ベルリンではQちゃんが優勝し、新潟競馬では武豊騎乗のビリーヴが優勝した。それぞれの休日、楽しい一日だった。

【リコー(1)結果】

 予選ブロックはNEC、ジュポン化粧品、特別区職員文化会。  
予選1Rリコー(1)vsNEC(1)
 大将野山 知敬×−○瀬川 晶司
 副将瀬良 司○−×長岡 俊勝
 三将山田 洋次○−×辻 清治
 四将馬上 勇人×−○加藤 徹
 五将菊田 裕司○−×山本 圭一
3−2
 
予選2Rリコー(1)vsジュポン化粧品(1)
 大将馬上 勇人×−○渡辺 健弥
 副将山田 洋次○−×嘉野 満
 三将菊田 裕司×−○池田 将
 四将瀬良 司×−○吉田 正和
 五将野山 知敬×−○青柳 敏郎
1−4
 
予選3Rリコー(1)vs特別区職員文化会
 大将山田 洋次○−×安島 弘祐
 副将馬上 勇人○−×斎藤 剛
 三将菊田 裕司○−×大湊 亮
 四将野山 知敬○−×飯島 章
 五将瀬良 司○−×金子 靖史
5−0

 ベスト4はジュポン、リコーと向こうの山は日レス、毎コミ。  
準決勝リコー(1)vs日本レストランシステム(1)
 大将山田 洋次○−×今泉 健司
 副将野山 知敬×−○石井 豊
 三将馬上 勇人×−○木村 秀利
 四将菊田 裕司×−○堀井 淳之
 五将瀬良 司○−×秋山 太郎
2−3
 
個人成績
 野山 知敬 1−3
 瀬良 司 3−1
 菊田 裕司 2−2
 山田 洋次 4−0
 馬上 勇人 1−3

(完:記2002年10月6日、改訂10月7日、改訂10月8日)


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