第84回 職域団体対抗将棋大会
年月日:2003年3月2日(日)
場所:千代田区「日本武道館」
スナップ集
西田さんや高橋君の名文に慣れている方々にはちょっと物足りないかもしれませんが、私もたまには職団戦のレポートを書いてみようと思い、マウスを執りました。と言っても、先達と同じパターンの文章では私のアイデンティティが出ません。私はスナップのような短い文章の集まりでレポートを構成してみます。
【朝の風景】
武道館と言えば、日本最大級のイベントホールでもある。多くのコンサートが開かれる。しかし、職団戦の朝の武道館前だけは、いつもと違う異様な光景に違いない。そこでは何十何百というおじさんがたむろし、自分のチームのメンバーが揃うのを待っている。いつもならキャピキャピの(これは死語か)若い娘がコンサートに入る前の人待ちをしているに違いない。ここが武道館だと思うから異様な光景だが後楽園の場外馬券売り場だとすると、みんな納得がいくかもしれない。慣れてしまった私には普通の光景にしか写らない。いつもの武道館前の光景である。
【鳥瞰図】
昔、一度だけ職団戦の光景を武道館の観客席の一番上から眺めたことがある。不思議な眺めだった。観客席には人はいない。そして会場には何千と言う人がいる。一番上からだと将棋盤なんか見えないので、何をしているかはわからないが、皆が席に着いて下を向いている。 目をつぶって想像して欲しい。
【開会式の風景】
職団戦の開会式はいつも同じである。日本将棋連盟二上会長の挨拶があり、その前に、20ほどの座席が並べられている。でもそこには誰もいない。選手皆は自分の席に着き、盤の前で開会を待っている。大人の集まりなので、煩くて何も聞こえないなんて言うことはないが、あまり聞いてはいないようである。皆、気を練っているのか。ただただ、この儀式が終わるを待っているのか。
【昔の名前】
時折、知った名前の人が相手のチームにいることがある。私は最近のアマ強豪を知らないので、私の名前の知っている人は「昔有名な人」である。「今有名な人」であるかはわからない。私のチーム、リコー4の2試合目の相手は東芝病院。その副将にOさんがいた。わがチームの庭野さんが対戦相手だ。...負けた。
終わった後にそっと庭野さんに言った「今の相手はちょっと有名な人ですよ。」
「そんなの慰めにもなんにもなんない」庭野さんの答え。そう、慰めにも何にもなんない。
チームも慰安戦1回戦で負けた。慰めにも何にもなんない。
【ナカピンさんとの会話】
中島一さん、皆がこの人をナカピンさんと呼ぶ。対局の合間に喫煙エリアでナカピンさんが話し掛けてくれた。「今日は職団戦の取材に来た。テーマは〇#$ ̄!ё。将棋世界に載せるつもりだ。」おっと、文字化けではない。言ってしまえば「将棋世界」の先取り。ナカピンさんに迷惑がかかる。できれば将棋世界を買って読んで欲しい。なかなか興味をひくテーマであった。
最近、職団戦は参加人数が減っているらしい。トップクラスは明らかにレベルが上がっているのに...。参加人数を上げるためのアイデアを出し合った。アイデアは泉のように出てくる。
最近の職団戦、マンネリ化の感がある。日本将棋連盟は、是非、この日本最大の将棋イベントを盛り上げる工夫をして欲しい。
【大学の先輩】
大学の将棋部の先輩のY社のI氏に会った。「我がC大学の将棋部の人が少ない」正確には「(先輩の知っている)C大学将棋部の人が少ない」だけであろう。私も知っている人が減った。だんだんと知っている人がいなくなる。
どこでも聞かれる話である。
【反省会の予約】
3時ごろ、リコー将棋部の部長で株式会社リコーの理事である柳川さんが応援に駆けつけてくれた。さすがはリコーの重役。そっと私に「今日の反省会は何処を予約している?」とフォローの囁きを入れていただけた。「予約はしていませんが、飯田橋で場所は決まっています。」
ちょっと怪訝な顔をされた。20人は軽く超える大人数である。予約なしで大丈夫なのだろうか?
後で納得していただいたであろう。日曜日の繁華街で飲み屋の予約など必要ないことを...。
【何で慰安戦に】
リコーの仲間、東京リコーチームはA級に在籍する。県代表クラスをズラリと揃える強豪チームである。虎視眈々とS級入りを狙っている。ところが、今回はくじ運悪く1回戦負け、裏街道に回ってしまった。そして、裏街道のベスト4で当たったのが何とあの富士通1。全国クラスのメンバーがずらっと揃い優勝経験もある元S級のチームである。裏街道で当たるなんて考えにくい豪華な組み合わせであった。結果は残念ながら東京リコーチームの2-3負け。
最近のAクラスは大変レベルが高い。しかも混戦で何処が優勝してもおかしくない代わりに何処が1回戦で負けてもおかしくない。
【残留決定戦】
久しぶりにS級に復帰したリコー2。健闘空しく予選リーグを1-4,2-3,0-5の3連敗。特別区教職員1との残留決定戦に臨んだ。
その副将戦は谷川-飯島戦。将棋はやや谷川さんやや不利のまま終盤に流れ込んだ。「これは谷川さんの負け」と思った瞬間、手品の鳩のような攻防の角が谷川さんの駒台から盤上に放たれた。逆転。そして最後は「綺麗な詰み」...と思った瞬間、相手が手を指した直後に谷川さんの時計が切れた。
いつも29.5秒で指す牧野君は絶対に時計を切らせない。ノータイム指しがウリの谷川さん、いつも0.5秒で指す谷川さん、だから押し忘れで切らしてしまうのである。
谷川さん、引きずらないで下さい。あのノータイム指しが谷川将棋の魅力の一つなんだから。
【囲いが堅いと】
現在の振り飛車戦は囲いが堅いほうが有利。これは明確。S級決勝戦のリコー(1)対日本レストランシステム(1)戦 四将戦 馬上-石井豊、我がリコーのホープ馬上君は銀冠の玉のこびんに銀がつく4枚銀冠に囲った。いや、正確には囲わされたと言うほうが正しいかもしれない。相手は金矢倉。振り飛車戦ならこの時点で55:45くらいのリードであるが、残念なことにこの対戦は矢倉戦であった。矢倉戦は先に仕掛けた方が有利。受ける側は反撃の態勢ができていなければ将棋にもならない。馬上君、そのまま4枚銀冠を押しつぶされてしまった。
【決勝戦の正しい見方】
S級の決勝戦は大変多くのギャラリーが集まる。なかなか将棋を見ることができない。ところがベストスポットがある。会場を出て観客席に登り、対局場の真上に行く。ここからなら全対局を見ることはできないものの、端っこの2局くらいまではじっくり見ることができる。
今回も四将の馬上-石井戦と菊田-木村秀利戦は見ることができた。このスポットの難点は対局者が盤に覆い被さると盤が見えなくなってしまうこと。プロのテレビ将棋の中継と同じである。でもそうなっても形勢だけは良くわかる。覆い被さっているほうが敗勢。これもプロと同じ。
残念なことに、序盤から終盤までリコー側の盤が良く見えなかった。持ち駒に手を充ててお辞儀をしたのは良くわかった。
悔しかった。
【拍手】
S級の決勝戦は日本レストラン1とリコー1の対決。日本レストラン1が3勝した瞬間に拍手が聞こえた。
うん十年前の関東大学リーグ戦を思い出した。私がC大学の将棋部に所属していた頃の話である。大学の団体対抗戦である。
相手の大学の観戦者が自分のチームが1勝する度に「M大学○勝」と大声で叫んでいた。皆が顔をしかめていた。
将棋の団体戦は、個人戦の集合体で構成される。したがって、チームとして最終的な結果に全く影響を及ぼさない対局でも「ハイ。もう勝負が決まったから終わりにします。」なんて言われる事はない。だから、どのような場合でも対局者の心理に影響を及ぼさないようにみんなが気を使う。観戦者が団体戦のスコアの途中経過を聞きたければ、近くの人の肩をそっとたたいて対局場の遠くに連れ出し、小さな声で「スコアは?」と聞く。相手も誰にも見えないようにスコアを小さく指で示してくれるのが普通であった。そんな雰囲気の中で、大声で「XX大学○勝」なんて叫ぶ者がいれば、誰もがいやな顔をするのは当然であろう。
拍手は観戦している分には遠慮がちだと思ったが、対局者の中にはかなり気になった者もいたようだ。私見ではあるが、できるだけ対局者の気になるような行為は避けたいものだ。
【戦利品】
職団戦、本戦の4回戦/慰安戦の3回戦くらいまで勝ち残るとだいたい戦利品にありつける。ところがこの戦利品、毎回すこぶる評判が悪い。将棋連盟の方々は一生懸命賞品を選んでいると思うが、残念なことに使い道のない物が多い。
ところが今回は非常に評判が良かった。「職団戦参加以来最高の賞品を貰った。」東京リコーチームのT氏の弁。お茶漬け海苔のセットであった。今回、リコーチーム参加者全40名のうち25名が戦利品にありつけた。
ついでを言うが、参加賞の扇子に「第xx回職域団体対抗将棋大会参加記念」の文字が入っているが、できればこの文字を外して欲しい。毎回貰って机の引き出しにてんこもりになっているこの参加賞も、この文字を外せばいろいろと使い道が増える。
【戦い終わって】
戦い終わって、くだんの反省会場に。女流プロの早水初段と大学女流強豪のNさんが合流してくれる。
そうそう最近の早水さん綺麗になった。ドキドキしてしまう。つい何年か前まで子供だと思ってたのに...。いやいや、これはセクハラ。
痛飲する。来期の糧にしなくては...。
【レポートだから】
レポートだと言うのに結果を記録しないと、怒られてしまう。今回のリコー将棋部の結果を以下に記載する。
リコー1 S級準優勝
リコー2 S級陥落
リコー3 A級ベスト8進出
リコー4 D級慰安戦初戦敗退
リコー5 D級慰安戦3回戦進出
リコー6 F級ベスト8進出
リコー7 E級慰安戦初戦敗退
東京リコー A級慰安戦ベスト4進出