イベント・レポート

マホロバ・マインズ三浦珍道中

〜〜〜冬合宿の下見〜〜〜

年月日:2003年11月8日(土)〜9日(日)

リポータ:西田 文太郎 e-mail : buntaro.nishida@nts.ricoh.co.jp

【第一部】 到達まで・・・マイカー編

 一行を乗せた車ミスター・ビーン号はほっぴーとひろりんの新居南町田を、13:40にスタートした。東名高速道路横浜インターの近くだ。国道16号線の保土ヶ谷バイパスを南に走る。後ろに乗ったほっぴーとひろりんは静かだ。MDからはZARDが流れている。ちょっと懐かしい「揺れる想い」だ。宇多田ヒカルの「デイープリバー」を持ってきたかったのだが、MDに収録するのをさぼっていたので、急遽そのへんにあるものを持ってきたのだ。バイパスは3車線をゴーゴーと大型車が突っ走るからうるさいが、後ろの座席にも曲は聞こえているはずだ。しかし何の反応もない。しかたがないから、助手席にいるまゆの手を握る。柔らかい感触にかわいい笑顔がたまらない。今日はベージュのパンツにピンクのシャツ、そして茶のベストだ。もっともまゆが見えたり、聞こえたりするのは、私だけで、他の人からは見えない透明人間だ。お気に入りのロボットだ。将棋はアマ四段クラスで、私もなかなか勝てない。将棋以外の知恵はほとんど授けていないから、普通の二十歳の女の子だ。やや細長の顔立ちで、モデルは鈴木杏樹だが、どことなく崩れている。この肖像使用権が高かった。値切った分、100%に届かなかったのだ。特技が二つある。一つは、データの宝庫なのだ。たいがいのことは出てくる。もう一つは、私の心を読むことだ。そしてすぐに実行するので、まゆがいるときは、うっかり心の中で考えてはいけない。
 車の数は多いが順調に流れていて、20分足らずで、狩場の横浜横須賀道路に入った。自慢のETCも拍子抜けするほど空いていて、あっさりゲートをくぐる。今はもう秋だから、だれも海には行かない。そんな静かな横横をゆったり走る。紅葉もぽつりぽつりで、まだまだだ。後ろの二人は、どこかで昼飯を食いたいと言った他は相変わらず静かだ。

 私「まほろばって、まぼろしだっけ?」
 まゆ「え? まほろば? ちょっとまってね」
 手をはなしたまゆは、白いベールをかぶってお祈りのポーズを取る。
 まゆ「倭は国のまほろば たたなづく 青垣 山隠れる 倭し うるはし」
 私「すぐれた所ってことか。万葉集かい?」
 まゆ「ぶぶう。古事記にはヤマトタケルの命の望郷歌ってでてるよ」
 私「そういえば、昔見たパンフレットに、そんなことが書いてあったような気がするな。だけど、インターネットでマホロバ・マインズを調べてもそういうこと書いてないんだよね。囲碁・将棋ができるって特徴も、昔ほど強くは打ち出していないみたいだし。何か戦略転換したのかな」
 まゆはもう一度祈りのポーズを取った。
 まゆ「わかったわ。2000年度の決算で、売上は32億なのに負債が265億もあったから、関連会社に譲渡したの」
 私「つまり経営者が替わったってことかな」
 まゆ「たぶんそうね。女性客にターゲットを絞っているようよ」

 20キロほど走り、横須賀の小さなパーキングに止まった。パーキングエリアは、ぽかぽかと小春日和で、気持ちがいい。ホッキーとひろりんのランチの時間だ。レストランは小さい割に、メニューが豊富だ。値段もリーゾナブルだろう。味も悪くはなさそうだ。ひろりんはうどんを食べている。おちょぼ口でかわいらしく食べる。まゆはどこかに消えてしまったので、私はコーヒーを飲む。暇つぶしに詰将棋を解く、というわけではない。そこにあったアンケート用紙に、二人の意見を聞きながら答える。ホッキーはどんぶりものだ、沢山食べられれば満足なのだ。食べるに従って、ほほえみの度合いが増してくる。

 パーキングを出ると、まもなく高速も出口となった。衣笠から横須賀三崎縦貫道路という手ももあるが、真っ直ぐ行って佐原から42号線を通り、野比で134号線に出る。
 津久井浜から三浦海岸のあたりで、ふと昔見た苦い光景を思い出した。いつの間にか横に座ったまゆが、からかう。

 まゆ「へえ、ここで彼女を見かけたの。あら、素敵じゃない、背がすらっとして。でもお上品だから、あなたの手にはおえないわね。ああ、あれが彼氏か、ウインドサーフィンも、格好いいわ」

 しまった、まゆがいるときに、うっかり思い出に耽ってはいけなかったのだ。まったくロボットみたいに、人の心の傷をえぐる奴だ。
 三浦海岸の近くにきたが、住所とかがわからない。ホッキーがまほろばの電話番号を控えていたので、脇に止まって、電話をする。しっとりとした女性の声が、道を教えてくれる。マクドナルドとガソリンスタンドが見える交差点を134号のまま進み、100メートルくらいで、セブンイレブンが右側にあるので、その手前を右折してくださいという。なるほど、交差点に行くと、右手前方にマホロバ・マインズの15階ほどの高さの建物が見える。セブンイレブンの手前を曲がり、坂を上ると右に本館、左に別館がある。
 南町田から、休憩をのぞいて、約1時間で着いた。早い、近い。わかりやすい。高速代金は1,100円だ。

【第二部】 到達まで・・・電車編

 南町田駅から田園都市線に、14:08乗る。14:17に、長津田からJR横浜線で、東神奈川経由で横浜に出る。14:52の京浜急行本線の快速特急に乗る。
 三浦海岸まで、約1時間半、990円。15:35分に一行は三浦海岸駅に降りた。改札口は、ホーム後方1カ所しかない。改札を出て、切符売り場の前にたつと、丘の上にマホロバ・マインズの雄姿が見える。

 早速昼飯を食べるところを探す。海岸方面の駅前には、ミニ懐石の「伊豆島」、「いろは寿し」、もつ煮込みの「みづき」などがならぶ。その「みづき」の先を左に曲がると、ほどなく「南下浦市民センター」がある。12月7日の第27回三浦三崎マグロ争奪将棋大会の会場だ。
 「みづき」の先を真っ直ぐに三崎口方向にほんの数メートル行くと、太い道路がある。県道武・上宮田線(214号線)だ。この信号を渡ると、そば処「和光庵」がある。和光庵じゃ嫌だという向きには、214号線を渡らずに左に進んでもらえば手打そば処「朝比奈」だってある。そのとちゅうに食堂「まるかつ」もある。ここは○勝つで縁起が良さそうだ。

 弁当などを買いたい場合は、駅の反対側に「京急ストア」があるので、ここがいいだろう。セブンイレブンは、電車の駅から行った場合は、通らないのだ。まあホテルからの距離はたかが知れているが。

 先ほどの「和光庵」の側に行くと、マホロバ・マインズは急に見えなくなるが、さて、お立ち会い。うまい具合に、マホロバ・マインズの地図を書いた立て看板が出ているのだ。路地を入って道なりに進み、T字路を右へ、次の三叉路を左へ行くと、本館だ。T字路に行けば、ホテルは見える。駐車場を二つ突っ切れば近いが、坂はあるしフェンスもあったりしてやっかいだなあと思って眺めていた。このあたりで空を見上げるのが定跡だ。鳶が悠然と泳いでいる。一羽、二羽、三羽。大きく弧を描くもの、上に行ったり下に行ったりするもの。時間はしばらく止まる。

 そのとき、いきなりまゆが私の手をつかんで走り出した。私には目の前の視界が消えて深い海の中をくぐっているように感じた。音も聞こえない。いったい何が起きているのだろうか。
 どうやら駐車場を走り抜け、芝生の坂を駆け上る。そして、あろうことか太い針金のフェンスを通り抜けたようだ。二つ目の駐車場も突っ走り、坂を駆け上りフェンスを通り抜けたらしい。トンネル効果という奴か。目の前に「柿ヶ作公園」という看板があった。ほっきーたちは、ちょっと横を向いているうちに私がいなくなったことなど、気づいていない。ゆっくりと道なりに公園の前までやってきた。

 三浦海岸には猫が多い。猫好きには魅力だ。ホテルの手前に、柿ヶ作公園というのがある。この階段を上ると、黒い猫が迎えに来る。さらに進んで、東屋に行くと、大きな三毛猫が寝そべっている。この公園は手入れをする人がいないのか、草ぼうぼうだ。ここで二人がひた隠しに隠していた秘密が暴かれる。ホッキーとひろりんは、その草の茎を抜いて、猫の鼻先で、ぐるぐる回したりする。二人とも猫好きだったのだ。二人とも鼻の下をデレーとさせて、にこにこしながら猫と戯れているのだ。いうまでもないことだが、次にここへ来て、黒猫の出迎えがなくても私のせいではない。

 本館に用がなければ、無視して、その先の右手、別館に行けばいい。対局場はここの一階にある。セブンイレブンのおにぎりが欲しければ、左に坂を30メートルも下れば、売っている。
 品川を11:33に出れば、12:35に三浦海岸に着く。830円だ。安い、早い。簡単。10:53に品川を出て、11:55三浦海岸着、そしてランチというのが王道か。
 7日のマグロ大会は、三浦海岸駅から徒歩1分だから、ホテルからは徒歩4分と近い。賞品のマグロを入れるリュックを忘れないことだ。

【第三部】 ホテル編

 ホテルのロビーに入ったのは3時をすこし過ぎたころだった。さすがに1500人も収容できるホテルとあって、チェックインのラッシュに遭遇してしまったらしく、長い行列ができている。カウンターには6人の美男・美女がいるのだが、なかなか進まない。一列にして待つようにしている点は評価できるが。。。お客様は、圧倒的に女性が多い。それも妙齢プラス30くらいはあるだろう。なるほど、マホロバ・マインズは女性客をターゲットにし、その狙いは的中しているようだ。11月でこの混み具合なら、一年中客室の稼働率は高いだろう。
 20分くらい行列をしただろうか、うまい具合に「あの人が一番イイナ」と思っていたカウンターの美人からどうぞとお声がかかった。後ろの行列は忘れて、うだうだと話しかける。下見に来たことを告げて、対局室を案内してもらうことにした。今度は男性だった。ややくたびれた新人といった印象の人で、親切で感じはいいが、ほとんど何も知らなかった。質問責めに降参して、すぐにベテランの方を呼んでくれた。
 対局場は、別館の1階の奥にある。途中に囲碁博物館がある。囲碁関係がほとんどだが、一角に将棋の棋書も2段ばかしおいてあった。目の子で100冊程度か。
 対局場の入り口は、天井が低くなっている。170センチの人は問題ないが、190センチの人はきっと殴打する。従って、その間の背丈の人は十分気を付けなくてはならない。
 部屋はやや細身のL字型で、テーブルと椅子がセットされていた。しかし将棋には不向きなものだった。聞くとやはり将棋用の椅子とテーブルは別にあるという。盤、駒、駒台、デジタル時計は十分にあるという。スペース的にも問題ない。飲み物は、セルフ式を用意してくれるという。夜食も注文次第だ。ケント紙も張れる。マイクがなくても、声は通りそうだ。
 問題が一つある。これまでここを使えなかった大きな問題だ。対局場を夜12時までしか使えないのだ。従業員を休ませなくてはいけないので、朝までは無理だという。客室に盤駒をもっていって、やるしかない。ホッキーとは、和室を一つ借りようかと相談する。その際、盤、駒の管理をきちんとしなくてはいけない。なくさないように、元に戻すように。自分の駒をなくす人はいないが、集団の駒はすぐになくなるから不思議だ。気の毒だが今回は、合宿委員の腕の見せ所が増えた。とにかくやってみるしかない。

 別館の自分たちの部屋に行って驚いた。ツインまたはシングルの標準タイプだ。鍵は、部屋によって右に回して空ける部屋と逆に回して開けるタイプとがある。リゾートマンション風の作りだ。2LKというのか。玄関脇に小部屋があり、布団もある。北側で環境は悪いが、使えないことはない。クローゼット、洗面所、バス、トイレと続く。長い廊下を進むとリビングがある。4人がけのテーブルがあり、椅子も4脚ある。テレビがあり、窓の外には、空と、他人の家がある。本館だと1000円アップで、広い海が見える。キッチンシンクもあり、電磁調理器IHと冷蔵庫、電気ポットがある。しかしIHは使用できないようになっている。
 そして、寝室には、ベッドが2台おいてある。私とまゆが寝るためのものだ。クッションが柔らかすぎずちょうどいい。まゆは、遠い目とつんとしたくちびるで、「エッチ」といって、窓の方に行った。あの憎々しさはまるでロボットらしくない。

 三浦海岸の海も夜のとばりがおりはじめ、下見で大事な舌味の時間となった。合宿当日は、宴会場がふさがっているので、対局場と同じような部屋を用意しているという。但し、食事はお弁当になる。しかし、舟盛りなどの注文はいかようにでもなるという。同じ食事を試すことはできなかったが、バイキングでの夕食は和・洋・中、何でもこいの豪華版であった。食事中もホッキーとひろりんはほとんど話をしない。かわいいひろりんのかわゆい妹さんも、派遣でリコーに行き始めたという。場所は大森第2だか、ベルポートだったか。

 食事の後は、風呂検分である。まゆと一緒に行きたいところだが、女湯の検分もしなくてはならないので、そっちをまかせる。後のお楽しみということもあるし。
 この風呂場の場所が、難解なのだ。本館正面から入って、突き当たりの階段を右手方向に一階上る。すると、すぐの所にエレベーターがある。ここを見逃すと、うろうろすることになる。エレベーターで、3階が女性用、4階が男性用となっていて、実はここしか出入りができないのだ。エレベーターを下りると門番の人がいて目を光らせている。マホロバマインズの浴衣着用か、入浴券をもっていないと、お引き取り願うことになっているようだ。
 4階に行き、のれんをくぐると、脱衣場がある。脱衣箱は、目の子40篭くらいありそうだ。広びろしている。体重計と足つぼ盤、扇風機など。
 温泉は、たしか1キロ以上掘って、熱い湯が出ているという。三浦海岸で温泉というのは珍しい。洗い場はざっと20人分位。湯船は、まずまずの広さだった。温泉は気持ちがいい。無色透明で、ナトリウム塩化物強塩温泉となっている。

 広いリビングにまゆと一緒にゆったりと座り、湯上がりの乾いた喉をビールでしめらせる。軽く1局さしてみる。ほんわかいい気分では、どんなときでも冷静なまゆにはかなわない。やがて夜も更けてきた。まゆは11時を過ぎると急に色っぽくなるのだ。仲良くベッドに行き、まゆの額に自分の額をくっつける。さっきの女湯の検分をしなくてはならないからだ。中はだいたい男湯と似ている。それにしてもまゆの映像には私の見たいピチピチギャルの姿は出てこない。自分に興味がなくっても少しぐらいサービスしろよといってみる。シャワーや、お湯や湯気が映っているだけだ。すーと画面の曇りが消えた。なんと女性には露天風呂がついている。これはけしからん、全国の男よ立ち上がれ、そして叫べ「男湯にも露天風呂を!」。やがてその映像は湯気で真っ白になった。

 翌日、チェックアウトしたあとに、もう一度行って、頼んでおいた和室を見せてもらった。ここを案内してくれた方は、とても上品で、大人の色気がそこはかとなく漂うきれいな人だった。こういう人が出現すると、ぷいとまゆは消えてしまう。10人用の和室は、北側の小部屋、クローゼット、洗面所、浴室などはツインとほぼ同じだが、和室が二間(8畳、8畳だったかな)もついていて、十分広い。本館なので、リビングから見える青い空と三浦海岸の海も広々としている。但し布団を敷くのはセルフサービスだという。確かにこの部屋数を布団を敷いて歩いたら大変だ。

【第四部】 近場の見所食いどころ

 三浦海岸まで来たら、どうしたって城ヶ島には行かなくてはならないだろう。北原白秋の「城ヶ島の雨」の舞台だ。車で10キロ足らずだ。城ヶ島大橋を渡るのに、150円かかる。その橋のたもとには白秋直筆になる「城ヶ島の雨」の詩碑がある。

 私「北原白秋っていつ頃の人だっけ」
 例によってまゆは白いベールをかぶりお祈りのポーズにはいる。夕べのベッドの中とは別人の、清楚なクリスチャンのようだ。
 まゆ「大正2年に、作られた詩よ。この時、すでに北原白秋は詩集「思い出」で、文壇の寵児になっていたの。だけど不幸な恋愛事件で、姦通罪で告訴されてるのね。あなたも気をつけたほうがいいかもよ」
 私「うん、気をつけなくっちゃ。そのうた、ちょいと歌っておくれ」
 まゆ「いいわ。♪雨はふるふる、城ヶ島の磯に、利休鼠の雨が降る。・・・」
 しっとりとしびれる歌が流れる。
 私「なんだいその利休鼠の雨ってのは」
 まゆ「銀色の雨というか、緑色を帯びた灰色の雨ね。白秋は心の傷を受けて、悲しくて辛くてその気持ちがこのフレーズを生み出したらしいわ」

 城ヶ島公園のパーキングに車を止め、散歩する。相変わらず、ホッキーとひろりんは、猫を見つけては夢遊病者のように近寄っていき、猫をなでたりしている。あの嬉しそうな笑顔が印象的だ。彼らには、白秋の悲しみも叫びも届かないようだ。
 公園の展望台からは、広い太平洋と、そこに浮かぶ漁船が沢山見える。海に降りていくと、城ヶ島の磯がそこにある。まゆが、「雨はふるふる・・・」と歌い続けている。

 近くの岩場で吊りをしている人たちもいる。のどかな秋の日曜日だ。

 城ヶ島大橋を戻って、もう少し三崎の方に行くと、グルメマップに出てくるお店が沢山ある。「ボリュームたっぷりのネギトロ丼」というフレーズに惹かれて、「咲乃家」を訪ねる。1000円で、これはうまい。づけ丼もうまい。おそらくこの辺はどこに行ってもうまいだろう。

完(2003年11月18日記、11月25日改)


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