【大会名称】- 第5回 東京チャンピオン戦 A級 決勝戦
【対局者】- ▲松本 誠(東工大) × △菊田 裕司(リコー)
【対局日】- 1995年12月17日
【対局場所】- 東京都港区 長谷川工務店 本社体育館
【解説】菊田 裕司(自戦記)
久しぶりの決勝戦進出である。
この大会のことを出る前まではまったく知らず、当日会場を見回してあまりのレベルの高さに驚いた。そんな中で決勝まで来れたのはラッキーだった。もっとも内容は、私としては満足の行くもので、序盤からリードして、それを広げていくという理想的な展開だった。
決勝は、松本さん得意の四間飛車に、ワンパターンの急戦で挑んだ。ここに来るまで、私は全局四間飛車、しかも対急戦が千日手を含めて4局もあり、さすがに、やや食傷気味であった。
46手目△8三飛までは何度か実戦経験のある形。この形は後手がややさせると思っていた。
50手目△9九角▲7八銀に、△8八歩か、本譜の順か、迷ったが、わかりやすくいった(つもりだった)。。。
▲6一角と打たれたときは「何をやってくるのかなー」ぐらいにしか思っていなかったが、▲5二角成と切られて目の前が真っ暗になった。▲8九金で飛が死ぬではないか。
いずれにしろ取る一手だが、ここはひとまず落ち着こうと思い、5分ぐらいボーっとしていた。改めて盤面を見ると手抜いて銀を取る手もあった。薄くなるので恐いが、踏み込んだ。
以下は、ほぼ必然で、▲6三ととなったときに長考に沈んだ。いっきに行く手が、なかなかうまくいかない。
△6二歩から△9四角は苦心の手順だったが、冷静だったと思う。ただ一度受けはじめると段々恐くなってきて、その後の手順ははっきり受けすぎ。幸便に▲7七馬と引かれては△5八龍と切る一手だが、これでは攻めが薄くなってしまった。
ここでははっきり失敗したと思っていたが、松本氏は既に秒読みで、こちらは鉄壁。実際の形勢はともかくこちらが勝ちやすいと思っていた。
ただいきなり△1五歩といったのは急ぎすぎ。△3三桂などともう少しためるのがよかったと思う。
敗着は、100手目△3五銀に対して▲4五桂と打った手。▲2七香と打たれていたら自信がなかった。松本氏はそこで△2四歩と突かれるのを恐れていたようだがこちらも恐くて指しにくいところである。
△2六銀と出られてはもう受けが効かない。
この大会で驚いたのは優勝賞品の多さである。賞金のほかに賞状が4枚、将棋盤 、駒音コンサートのチケットなど、一人で持ち帰るのは大変だった。表彰式では、一番小さな賞金を落とした上に踏んづけてしまい、のし袋に自分の足跡が大きくついてしまった。
【棋譜】