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2013年度春季職団戦 優勝戦記

[日時]2013年4月14日

[場所]東京武道館

記:河崎 素良

 【序】
リコーが最後に職団戦S級で優勝したのが2010年4月。丸3年優勝から遠ざかっていた。
新戦力も2010年度の私の年代を最後に2011年度から2013年度の3年連続で加入ゼロで、
閉塞感のような行き詰まり感のような状態が続いていた。

今回は現状打破の意味合いも兼ねて、リコーの一軍と二軍のメンバーをばらけ、
両チームが一軍のような扱いのメンバー構成にした。
これは2チームともS級に在籍していることと、リコーの現在の強みと言える層の厚さがあることから可能な構成で、
いろんな意味で今のリコーだからこそ出来るチーム構成ではないかと思えた。

戦力を均等化したことで両チームとも均等に優勝の可能性があるが、
両チームとも均等に冴えない成績に終わる可能性が高まったとも言え、
吉と出るか凶と出るか、期待と不安の入り混じりのような状態で職団戦当日を迎えた。

ただ、目指すのは優勝のみという点についてはこれまでと変わりはなかったように思う。

私は所属したのはリコー2チームで、メンバーは以下の通りである。
野山、瀬良、山田(洋)、伊藤、河崎 

新鮮なチーム構成で、個人的には開始前から非常に楽しみだった。


【予選1回戦 対ジュポン化粧品 4−1勝ち】

※以下当たりは全て敬称略
山田 ○-× 渡辺(健)
野山 ○-× 嘉野
伊藤 ○-× 渡邊(徳)
瀬良 ×-○ 桐山
河崎 ○-× 上岡

抽選の結果、予選ブロックはジュポン化粧品さん、日本レストランシステムさん、NEC(2)さんと同じブロックに入った。
初戦はジュポン化粧品さん。各所難しい将棋だったが、結果的に4−1勝ちと望外の結果を収めることができた。

 

図は三将戦より。ここでの△7五歩が若干早かったか、以下▲7五同歩△同角▲6五歩から盛り上がったときに
後手の金銀の立ち遅れが大きかった。
以下激しい攻め合いが展開されたが、ぎりぎり伊藤がかわして勝利。
良いスタートを切ることができた。

【予選2回戦 対日本レストランシステム 2−3負け】

山田 ○-× 山下
野山 ○-× 前田
伊藤 ×-○ 鰐渕
瀬良 ×-○ 野島
河崎 ×-○ 城間

2回戦は日本レストランシステムさん。ここを勝てば予選通過がぐっと近づくところだったが、
惜しくも届かず残念ながら2−3負けだった。

 

図は大将戦より。山下さんの攻めを余せるかどうかの局面だが、
以下△2三玉▲2一角に△1一歩が珍しい形の受け。
以降も先手の攻めが続いたが、ぎりぎり余して先手の馬を取り去ることに成功し、
以下素早く反撃を決めて勝ちを収めた。

しかし三将〜五将が全て抜かれて惜しくも届かなかった。
特に五将戦は残念な内容で、中盤で3択ある局面で一番ダメなルートを選択し
以下うまく指されて光の速さで潰された。恥ずかしい。
なお並び順は初戦と同じだったが、その意図については不明(未確認)である。


【予選3回戦 対NEC(2) 4−1勝ち】

瀬良 ○-× 船橋
伊藤 ○-× 加藤(徹)
野山 ○-× 佐藤
河崎 ×-○ 山本
山田 ○-× 川村

予選最終局はNEC(2)さん。
状況的にはここを勝てば予選通過で個人的にも気合いが入ったが、
誰か一人だけ炎上した以外は全て勝ちの4−1勝ちというまた望外の結果を収めることができた。

 

図はその炎上した将棋。
途中で垂らした▲2四歩を強く回収に来られ、
以下頑張って攻めかかったものの丁寧に受け止められて形も作れない大敗を喫してしまった。
内容的にも完全に力負けで、結果的にチームが勝って助かったが
この内容で2−3負けだったら地面を掘る勢いで土下座しないといけないかと内心震えていた。

予選の全局が終了して2勝1敗のチームが3チームでき、勝数の関係でリコー(2)が1位通過という結果に。
隣の予選ブロックもリコー(1)が1位通過を果たし、予選はリコーにとって最高の結果を得ることができた。
戦力分散型のチーム編成がこれ以上ないくらい活きた形だった。

【準決勝 対NEC(1) 3−2勝ち】

伊藤 ○-× 加藤(幸)
山田 ○-× 林
河崎 ×-○ 山口
野山 ○-× 宮原
瀬良 ×-○ 清水上

準決勝の相手チームはここ数年急所で負かされ続けたNEC(1)さん。
決勝でリコー対決を夢見ていたこともあり、決勝戦のつもりで臨んだ。

最初に終わったのは副将戦。

 

パッと見は後手が苦しそうに見えたが、
ここから△5五角▲7七桂△9三桂▲8六歩△8五歩▲9二飛成△8六歩▲5六香に
△7七角成!▲同銀△8七歩成で突然攻めが急所に刺さった。
こうなっては粘りの効かない形で、1−0。

次に終わったのは五将戦。

 

清水上さんの角交換四間飛車に瀬良が普通に駒組みをしていたはずが、
図の△6四角が機敏だったようで斜めのラインが妙に受けにくい。
以降も淀みなく攻められ、瀬良にとって力の出せない展開にされてしまった。
攻め潰されて敗れてしまい、1−1。

次に終わったのは四将戦。

 

相銀冠から激しい攻め合いに突入し、ここで▲3四角成△同歩▲2四桂で自然に先手が駒得に成功したが
△3三金で妙に後手玉を寄せるのが難しかったか。
図では▲2四桂△同金▲3五銀打などと6一の角を残して拠点を消さない攻めの方が
先手としてはよかったかもしれない。

以降も熱戦が続いたが野山が際どく制した。2−1。

次に終わったのは三将戦の私のところ。

 

図で数分読みを入れ(たつもりになって)指した▲9四銀がおそらく敗着。
以下△7四銀▲7三角成△8五桂▲7四馬に△9七桂成をなぜか見落としていた。
以下手数は長引いたものの見所はほぼ皆無で、前局に続き恥ずかしい将棋を披露してしまった。2−2。

三将戦とほぼ同時に大将戦が終了。

 

図の▲7五歩から伊藤好みの玉頭の厚みを築き、

 

図以下▲2五桂△2四角▲4五歩が厳しい攻めだった。
以下も丁寧な指し手が続き、ギリギリの3−2勝ちを収め決勝に進むことができた。

【決勝 対日本レストランシステム 3.5−1.5勝ち】

瀬良 ×-○ 城間
伊藤 △-△ 鰐渕
山田 ○-× 野島
河崎 ○-× 前田
野山 ○-× 山下

決勝でのリコー対決を夢見ていたが、リコー(1)が日本レストランシステムさんに2−3負けを喫し、
日本レストランシステムさんとの決勝戦に。

最初に終わったのは五将戦。

 

有利な中盤戦から徐々に追い上げられ怪しい雰囲気がしていたが、
図で▲8三桂が見事な見切りで、ぎりぎり踏ん張ることができた。
以下△同金▲同歩成で、先手玉は王手が続く形でかなり危険だがぎりぎり詰まず、先勝。
終局は最も早かったが非常に内容の濃い将棋で、野山はこれで5局全勝と素晴らしい成績を収めた。

次に終わったのは大将戦、城間さんのゴキゲン中飛車に瀬良が星野流から相穴熊に組み図の局面に。

 

普通の手に見える▲3七桂だったが、以下△4二角▲6五金△3五歩と跳ねたばかりの桂頭を攻められて
苦戦に陥ってしまった。
機敏な仕掛けから淀みなく寄せ切られてしまい、1−1。

次に終わったのは三将戦、相振り飛車の出だしから一方的に馬を作られ苦しそうな展開だったが、
次第に乱戦に発展して図の局面に。

 

図から▲6六歩△3四桂▲6五歩が味わい深い手順。(深すぎて分からない・・・。)
以下玉頭から攻められたが丁寧に余し、素早く反撃を決めて勝ち。
これで野山に続き山田も5局全勝を達成。公私とも多忙と思われる中でこの結果はさすがとしか言いようがなく、
少しでも追いつけるよう精進したい。

次に終わったのは四将戦の私の所。
変則相居飛車の出だしで始まり、中盤〜終盤入口あたりで互いにミスショットがあり泥仕合化していたが、
ふと気が付くと自玉が安全に。(棋譜が並ばないため図面は省略・・・)

最終盤で勝ち(1手必至。そこに至ってようやく勝ったと思った)を確信したとき、
ふと顔を上げると周囲を大勢の観戦の方々に囲まれていることに気が付いた。
それまで全く気付かなかったので少し驚いたが、この雰囲気から察するにここの結果によっては
どちらかの優勝が決まるんだろうということを何となく感じた。

隣の対局の結果も知らなかったので、どちらのチームが優位なのかもまるで分からなかったが、
前田さんが投了した瞬間に周囲の緊張感が和らいだので、私の勝ちでリコーの優勝が決まったことが雰囲気から分かった。

この時点で3−1、リコー3年ぶりの優勝が確定した。

最後に終わったのは副将戦。
鰐渕さんの振り飛車に伊藤が得意戦法(にしようとしている途中?)の棒金で対抗し、
少し悪そうな局面で何とか千日手に。
指し直し局は持ち時間が少なかったこともあり伊藤が居飛車穴熊に。
途中は形勢がよかったようだが、鰐渕さんにかなり追い上げられ再び千日手が成立し、
この時点で既にチームの勝敗も決まっていたため副将戦は引分けという形で全対局が終了した。

【総括】
私のとっては初の職団戦優勝、他のメンバーにとっては久々の優勝ということで、非常に嬉しい日でした。

結果は出すだけではなく続けることが大事だとよく聞きますが、前回の職団戦優勝から今回の優勝までの3年間は
そのことを身を以て実感した期間だったと思います。
今回はこのような結果を残せましたが、どこかで一歩間違えれば予選敗退もあり得たはずで、厳しい戦いだったと思います。
今回の結果に浮かれることなく、継続して結果が出せるようリコー将棋部一丸となって取り組んでいければと思います。

最後に優勝メンバーのコメントを記載します。
皆様本当にありがとうございました。

* * * * *

[野山コメント]
今回は久々の優勝なので感動的でした。チームワークの勝利と思います。優勝が決まったとき、思わず目頭が熱くなりました。リコーチームとして一番うれしいのは職団戦の優勝でしょう。S級はどのチームもプロみたいな人たちばかりなので、このような難関を勝ち抜いたという達成感も相当なものと思います。祝勝会も大変な盛り上がりようで、文字通りの美酒を味わいました。
個人的にはそろそろ定年が見え始める年齢になり、自分でも驚いていますが、いろいろと今後のことを考えざるを得ないため将棋の研究はまるでやっておらず、週刊将棋を読むぐらい。従い、詰将棋も週刊将棋のロータリー3題×4週で月に12題解くだけというありさま。但し、大阪では正棋会に立場上出席せざるをえないので月に5局は指しており、忘れない程度に継続しています。この会がらみの人間関係だとか、運営だとかはホント大変・・・
このような状況の中で全勝できたのは本当に驚きですが、周りの勝利への執着心が伝わってきたことが大きかったと思います。最新形にはまるでついていけないので古い戦法をオリジナルで指しているのは実に楽しいものです。
最後に、若手にはがんばってもらって、早く私を楽にしてほしい(笑)と言いたいところですが、気力が続く限りはまた美酒を味わえるよう挑戦し続けたいと思います。素晴らしきリコーチームと皆が実感できるように。


[瀬良コメント]
個人的にはあまり戦績は良くなくチームに迷惑をかけてしまいましたが、3年ぶりの優勝で非常にうれしいです。
ベテランと若手の絶妙?のチーム編成で、2チームとも優勝を目指して臨んだことが、結果的に適度の緊張感を生み良かったと思います。
次回は頑張りたいです。


[山田コメント]
今回の優勝は、今までの中でも一番嬉しい優勝だった。
前回の優勝は3年前であり、当時とはメンバーが大幅に違う中でも優勝できたのは、リコー将棋部にとって新たな可能性を感じる事ができた。
メンバー構成もベテランから若手風まで幅広いメンバーで、調子が悪いメンバーがいても潜在能力はあるので、うまく力を出せるかどうかがポイントだった。
チームリーダーの伊藤くんが、巧妙にオーダーを組み、勝負となるポイント局が面白くできていた。
決勝がリコー対決にならなかった事は非常に残念だったが、準決勝でNECに勝った事で皆の顔から自信を感じる事ができた。
チームメンバーと応援していた将棋部メンバーに感謝を言いたいです。


[伊藤コメント]
紆余曲折を経て、今回チームリーダーを担当しました。
個人的に野山さん、瀬良さんといった黄金期の方々の隣で戦ってみたかったのと
座りの良さからこのチームを推しましたが、メンバー編成の際には改めて選手層の厚さを感じました。
野山さんと洋次さんが貫禄の全勝!河崎さんも途中まで不調でしたが、決勝では貴重な3勝目をあげ
チームワークが光りました。結果的に当初目標に掲げたことがほぼ達成できていました。

これまでにない優勝のパターンなので喜びもひとしおです。
リコー将棋部の底力をライバル企業だけでなく部内にもアピールできたのではないかと思います。
まだまだ黄金期の実績にはほど遠いですが、今回の優勝をさらに上を目指すきっかけにしたいと思います。


[河崎コメント]
入部4年目にして初めて優勝メンバーの一員に加わることができ感無量です。
自分は決勝までの成績が1−3と全く役に立っておらず、自分の弱さと不甲斐なさで泣けてきそうな状態でしたが、
最後の最後で優勝を決める勝ちを得ることができ、今度は違う意味で泣けてきそうになりました。

チームメンバーおよび応援して下さったリコー将棋部の皆様方のおかげです、ありがとうございました。

* * * * *

 

 


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