第19回アマチュア将棋団体日本選手権
〜〜〜立命館大学が6年ぶり2度目のV〜〜〜
年月日:2007年2月24日(土)
場所:東京都大田区「リコー大森会館」
主催:株式会社 リコー
後援:日本将棋連盟、週刊将棋、全日本学生将棋連盟、ジュポン化粧品
社会人と学生のナンバーワンチーム(職団戦、学生王座戦の成績で代表決定)が7人対抗で団体日本一を決める第19回アマチュア将棋団体日本選手権(主催・リコー 後援 日本将棋連盟、週刊将棋、全日本学生将棋連盟、ジュポン化粧品)がリコーと立命館大学の組み合わせで2月24日に東京都大田区「リコー大森会館」で行われ、立命館大学が4勝3敗で勝ち6年ぶり2度目の優勝を飾った。
【決戦前】
今年で19回目を迎える本大会、社会人代表は春の職団戦準優勝、秋優勝のリコー(7年ぶり9回目)学生代表は冬の王座戦を全勝優勝した立命館大学(2年ぶり5回目)。
今年は日本将棋連盟から島朗八段、瀬川晶司四段、室田伊緒女流一級をお招きし、併設イベントとして小学生を中心とした指導対局会を実施した。
対局前に立命館の円陣が組まれ気合のかけ声が響く。大会会場は室田女流が「怖かった」と後に感想をもらしていた程の緊張感があった。
当たりはリコー−立命館大学の順で大将から野山知敬―稲葉聡、細川大市郎―石本優、武田俊平−古屋皓介、山田洋次―中野太輔、星出明―宮原洋介、馬上勇人―須戸真樹、桑山尚司―奥村龍馬。戦いの模様を振り返ってみたい。
【副将戦:細川、怪しい対決を制する!】
細川は石本君を警戒していた。「何か怪しい雰囲気がある。」2年前にこの大会で瀬川さんを破った記憶が蘇る。細川、得意の動物的直感が危険を感じとった。対して石本君は思ったはずだ。「あなたの方がどうみても怪しい。」獲物を探すようなギラついた目にどっかの芸人のような怪しいスーツの着こなし、どうみてもサラリーマンには見えない。冷静にみて、細川の方がどうみても怪しい。
お互いがお互いを警戒する本局は石本君の四間飛車に細川の5筋位どりに落ち着いた。細川の仕掛けに石本君が強く反発した手が無理気味で細川が優勢となる。図は△5四角と打った局面だが、ここで▲6六桂と打った手が決め手。△6五角に▲5四銀△4九飛成▲6五銀△同歩▲5四桂と気持ちのいい跳躍を決め細川が勝ちきった。
「石本君は瀬川戦をみて強敵と感じていたがその後、学生棋界であまり名前を聞かなかったので不思議に思っていました。今日はちょっとその訳がわかりました(笑)。」と細川。
石本君にとっては不出来な将棋となってしまった。
【六将戦:須戸、圧勝!】
続いて終わったのが六将戦。私、馬上と立命館のポイントゲッター須戸君との戦い。
須戸君の急戦矢倉模様の出だしから雁木に組み替え角を転換したのが図の局面。
ここで▲9九玉としたのが危険な一手だった。すかさず、△8六歩▲同歩△8五歩▲同歩△9五歩▲8八銀△9六歩▲9五歩△7三桂と攻められては6六の打ち込みの傷もあり先手玉は持たない。
この後も須戸君の緩急自在の指し回しになす術なく敗れた。こうして改めて並べなおしてみると我ながら実に弱い。もう一回出直してきます。
「今日は緩めてもらいました、また来年この舞台に立ちたい。」と須戸君。これで立命館の1−1。
【三将戦:古屋、制勝。(武田、熱く散る。)】
三将戦は将棋を愛し、勝負を愛し、そしてやっぱり将棋を愛する武田俊平と今年のアマ準名人、古屋君の戦い。相矢倉から武田が趣向を凝らしたが、古屋君の完璧な対応に劣勢になる。そこから武田は椅子の上に正座し、鬼の形相と怒涛の気迫で立ち向かう。
ここで△7四銀と打ったのが武田渾身の勝負手。▲同金△5五角▲4四歩△同銀右▲7四金△5五角▲6六歩△3七角成となった局面は先手も忙しい。この後、武田にチャンスがきたが攻め急いでしまったため冷静に対応され、古屋君の勝ちとなった。
「日本選手権は普段より持ち時間が長いので楽しみにしていました。武田さんのような強敵に勝つことができて嬉しい。」と古屋君。
武田は「苦しい時間が長くてチャンスを逃してしまった。大変悔しいが、ここでくじけたら武田俊平ではなくなる。」と再起を誓った。
【大将戦:野山、会心の勝利】
大将戦。野山は毎朝6時に起き棋譜並べを3局、詰め将棋を解いてから会社へ向かう。その情熱と努力は誰にも負けない。稲葉君は元奨励会出身。1年次に学生名人を獲得、今年は学生王将を獲得し2冠となった。口数は少ないが熱いハートを持つ闘将だ。
稲葉君の向かい飛車に対して野山が果敢に急戦を仕掛け激しい打ち合いとなったのが図の局面。ここで△5五銀とさらに踏み込んでいったのが野山の若さ溢れる一着。▲3三歩が見えているだけに非常に怖い。以下、▲3三歩△同桂▲同桂成△同角▲4四桂△同銀▲同歩△同角▲4六角△5五歩▲3三歩△4二玉▲4五銀△54桂と難しい勝負が続いたが、終始強気の攻めをみせた野山が制勝した。本大会一番の熱戦だった。
「関西で何局も指しているが最近勝っていなかったので勝てて嬉しい。若手と指すのは本当に楽しいと感じだ。」と野山。
稲葉君は「今日の野山さんは踏み込みが強くて今まで指した中で一番強かった。また教えてもらいたい。」と語ってくれた。これで立命館の2−2。
【五将戦:宮原、念願の初勝利!】
五将戦は「手厚くこってり」が信条の星出と今大会3回目の出場となる宮原君の戦い。
矢倉の角交換型から星出が自陣角を放ち、角と銀、桂馬の二枚替えを決行。
ここで、△3四銀と打ったのが自分らしい一着(星出)といっていたが、さすがにやりすぎでしょう。
いくら何でもこってりすぎる。この後、▲7一角△4二飛▲8三角成から手厚く指され星出も入玉を試みたが最後は3八までたどり着いたところでご臨終となってしまった。
宮原君は3回目にして日本選手権初勝利。
【七将戦:奥村、自然流で快勝!】
七将戦はもの静かだが内に熱い闘志を秘める桑山と、宮原君と共に日本選手権3回目の出場となるファイター奥村君の戦い。奥村君の四間飛車に桑山の左美濃で対抗した本局は奥村君が作戦勝ちから自然な差し回しでリードする。
既に奥村君が良さそうだが、ここで△4五銀▲同歩△5六歩とするのが桑山最後の勝負手だった。本譜は先に△5六歩と指してしまったので▲6六銀と指され△4五銀には▲5五歩があるため後手が勝てない将棋になってしまった。以下も奥村君はリードを拡大し、快勝した。
これで立命館の4−2となり6年ぶり2度目の優勝が決まった。
「過去二回、この大会で優勝できなかったので今回勝てて本当に嬉しい。」と奥村君。
【四将戦:山田、意地の勝利】
最後に残ったのが四将戦。今年のアマ名人でありリコー将棋部主将の山田と立命館期待のルーキー中野君の戦い。山田の変則的な角交換四間飛車から戦機を捉えた中野君が優勢に局面を進める。
図は△6五桂に▲5八金と引いた局面。ここで、△5六角▲同銀△4五歩とすれば、直後の△4六桂が厳しく、中野の勝勢だった。本譜は△6六桂▲5九金△7九飛▲6八角△9九龍▲9二龍△7八桂成▲9五角と進み、流れがおかしくなり最後は山田が逆転勝ちをおさめた。
「自分らしい将棋が指せて満足しているが、主将としてチームが負けたのは非常に残念。」と山田。
【第20回大会に向けて】
こうして今年の日本選手権は立命館大学が4−3で勝ち6年ぶりの優勝、対戦成績は社会人の11勝8敗になった。稲葉主将を中心とした気合と団結力が立命館の勝因だったと思う。敗因を考えてみると残念ながら、気持ちで負けていた部分が大きかった。オーダーもよくなかった。社会人の代表として「立命館の挑戦を受けてたつ」という気持ちが足りなかったと思う。
今大会は新しい試みとして全局をWebでリアルタイムに中継し、プロ棋士の先生方による指導対局を実施したが大変好評だった。島八段の「日本選手権は初めて見にきましたが素晴らしい大会で大変感動しました。日本将棋連盟として今後もサポートしていきたい。」という言葉は本当に嬉しかった。来年は第20回という節目の年を迎えるが今まで以上に大会を盛り上げていきたいと思う。
最後になりましたが、選手の皆様、応援してくれた皆様、本当にありがとうございました。
第19回の結果(2007年2月24日) 【リコー】 3 − 4 【立命館大学】 大 将 ▽ 野山 知敬 ○ − ● ▲ 稲葉 聡 副 将 ▲ 細川 大市郎 ○ − ● ▽ 石本 優 三 将 ▽ 武田 俊平 ● − ○ ▲ 古屋 皓介 四 将 ▲ 山田 洋次 ○ − ● ▽ 中野 太輔 五 将 ▽ 星出 明 ● − ○ ▲ 宮原 洋介 六 将 ▲ 馬上 勇人 ● − ○ ▽ 須戸 真樹 七 将 ▽ 桑山 尚司 ● − ○ ▲ 奥村 龍馬過去の結果
社会人代表 | 勝敗 | 学生代表 | |
第1回 | リコー | 6−1 | 東京大学 |
第2回 | リコー | 5−2 | 早稲田大学 |
第3回 | 東芝 | 3−4 | 京都大学 |
第4回 | リコー | 5−2 | 東京大学 |
第5回 | リコー | 4−3 | 東京大学 |
第6回 | アルゴリズム研究所 | 3−4 | 東京大学 |
第7回 | 富士通 | 4−3 | 東京大学 |
第8回 | リコー | 5−2 | 東京大学 |
第9回 | プロセス資材 | 3−4 | 早稲田大学 |
第10回 | リコー | 3−4 | 東京大学 |
第11回 | リコー | 5−2 | 早稲田大学 |
第12回 | リコー | 3−4 | 慶應義塾大学 |
第13回 | プロセス資材 | 2−5 | 立命館大学 |
第14回 | ジュポン化粧品 | 4−3 | 明治大学 |
第15回 | ジュポン化粧品 | 4−3 | 立命館大学 |
第16回 | 日本レストランシステム | 4−2 | 立命館大学 |
第17回 | NEC | 5−2 | 立命館大学 |
第18回 | NEC | 2−5 | 東京大学 |
第19回 | リコー | 3−4 | 立命館大学 |
11−8 |