イベント・レポート

第78回職域団体対抗将棋大会

   〜〜〜リコー3連覇ならず〜〜〜

月日:2000年3月5日(日曜日) 9時〜18時

場所:千代田区「武道館」

リポータ:吉中 勝則 yosinaka@ic.redd.ricoh.co.jp

【試合開始前の儀式】

 3月5日8:45、いつもの集合場所に行くと、既にほとんどの人が集合していた。

 出席者の確認と、各チーム幹事に参加証を渡す。これが、ここ10年来半年に一度の私の仕事となっている。
 いつも、試合直前まで数人足りない。人数の足りないチームを確認し、最悪の場合メンバーをどのように調整するか考える。
 大概の場合、この作業は徒労に終わる。遅刻者が試合開始ぎりぎりに来て、メンバーは足りてしまうからである。
 しかし、人数が揃うまでは気を揉みながら広い武道館を走り回る。

 今年も、武道館の中を走り回っていると加藤一二三九段の審判長挨拶が聞こえてきた。
 ありゃ、珍しや武道館で加藤さんのスピーチを聞くなんて何年ぶりだろう。

 「それにしても長いスピーチだ。」と、思っていると、言葉が途切れた瞬間に万雷の拍手が鳴った。
 これがスピーチ終わりの合図。話は終わってなかったと思うが、まあいいか。

 いつものように試合が開始される。そしていつものようにどのチームもメンバーが揃っていた。

 リコーはここ数年7チーム構成である。今回の出場は、S-A-A-D-C-F-E-A(TR)である。
 一時、七対子がテンパったこともあったが、いつのまりやら手代わりで、一気通貫のテンパイになっていた。

 もちろん頭がAである。待ちは何でしょう。


【Sクラス第1試合】

 全部で8チームが出場するSはまずブロック分けのくじ引きを行う。

 今年はAブロックがNEC/成和/リコー/プロセス、Bブロックは日立/東芝/ジュポン/富士通だった。いつものことであるがくじ引きで皆、一喜一憂する。もちろん強敵と 同じブロックに入ることを希望して「闘志を燃やす」なんていう殊勝な人はいないようだ。密かにみんな「XXチームに当たりたい」と願っている。

 今年は、A・Bほぼイーブンの組合せかもしれない。(どちらかのブロックが得をしていると思うが、この文章はホームページに載ると思うので、本音はとても言えな い。)「どこも強敵、素晴らしいチームなのだ。」

 我がリコー1の第1試合はプロセス資材と。宿命のライバルになってしまった対戦である。この2チームの対戦、職団戦ではリコーが分が良く。社団戦ではプロセスが分 が良い。

 いつものようにメンバー交換。

 並びが決まったところで、プロセスの石田氏とリコー三将の佐々木君の会話。

 石田氏
  「あれ、佐々木さん、リコー社内レーティングで3位でしたっけ?」

 佐々木君
  「私は点数が動かないのに、周りが動いていくんだ。」

 敵はリコーホームページまで研究して並び順を読んでいるようだ。確か、佐々木君の順位はHomePage上では4位か5位だった。ほんのちょっと古いデータで最新のRating はアップされていなかった。五将の石田氏は自分と当たるかもしれないと読んでいたのであろう。

 試合の方は、
 リコー プロセス  
大将山田遠藤 相振飛車
副将瀬良河上矢倉
三将佐々木小林矢倉
四将野山青野青野氏の振り穴 野山57角戦法
五将菊田石田右玉 南流か?


 で、始まった。

 「始まった」というのは非常に正しい表現で、中盤の入り口で、一番上の行は
 リコー プロセス  
大将山田遠藤 遠藤三間飛車 山田棒銀


 になっていた。

 一つ一つの棋譜の解説をしてもよいが、私の解説では馬鹿にされるだけなので一局、リコー側の「おはこ」が決まった将棋の一場面だけお見せしましょう。

 四将の野山vs青野戦である。盤面は見易い様にひっくり返している。



 図から86歩、同歩、85歩、同歩、同飛、86歩、同角、同角、同飛、88歩、79角と進みあっという間に将棋は終わってしまった。

 「86同角に同飛のところ88飛は77角成、85飛、同桂、77桂、同桂成というアクロバットのような手順で居飛車優勢となる。ほかに86歩、同歩、87歩あるいは一歩なくて も86歩、同歩、55歩、同銀、86角、88飛、77角成、82飛成、55馬というような順もある。だからこの戦法はやめられない。」と、本人の談。

 知らないと振り飛車側が、簡単に悪くなる順である。クワバラクワバラ。

 リコー将棋部の皆さん、たまにある筋だから覚えておきましょう。他の人は忘れてください。

 チームの成績は、
 
 リコー プロセス
大将山 田×遠 藤 ○
副将瀬 良○河 上×
三将佐々木×小 林○
四将野 山○青 野×
五将菊 田○石 田×


 で、リコーの勝ち。



【S級第2試合】

 第二試合は広島から大遠征をして来られた、成和産業である。

 何でもS級昇級以来、チームが1勝もしていないと聞いている。それでもS級に残っていられるのは各個人が強く、しぶとく白星を稼いでいる証拠。

 結果は以下の通りであった。

 リコー 成和産業  
大将山 田○ 柿 本× 相振り飛車
副将瀬 良× 宮 本○相穴熊 瀬良四間飛車
三将佐々木○中 谷×矢倉
四将野 山○青 野×矢倉
五将菊 田○古 賀×古賀四間飛車 菊田ななめ棒銀


 自分は「ふり飛車党」。どうしても戦形表記は振り飛車だけ詳しくなってしまう。悲しいかなふり飛車党の私の目には矢倉はみんな同じ将棋に映ってしまう。昔、一念 発起して、矢倉党になろうと矢倉の定跡書を買ってきて読んでみた。でも、これにて良しの局面が「どうして良し」か、わからないし、なんでこんな不利な局面が「基本 図」になっているのかと理解できない図もあった。

 第一、読んだ翌日にはその局面を思い出せなかったのである。そんな、こんなで、矢倉党を諦めてしまった。



【他のクラス】

 第二試合のころから、A級出場者のメンバーが集まり出す。そう、職団戦、会場の都合でA級だけは午後から試合が開始されるのである。私は密かにこの人たちの集合 を「重役出勤」と呼んでいる。

 同じ頃、リコーの本当の重役、柳川将棋部部長も応援におこしになられた。みんなの気合が変わってきた。

 この後は午後から、午後の第一戦はNEC戦であった。

 ここで、ここまでの2軍以下の成績を記しておこう。おっと、2軍/3軍/東京リコーチームは重役なのでまだ将棋を始めていなかった。

 4軍以下はこうなっていた。

●リコー4 D級
1回戦2-3vs京葉瓦斯
慰安戦1回戦2-3vs国税局大手町3

●リコー5 C級
1回戦4-1vs公認会計士2
2回戦3-2vsさくら銀行

●リコー6 F級
1回戦4-1vsNECエンジニアリング
2回戦1-4 vsNHK2

●リコー7 E級
1回戦2-3vs東芝5
慰安戦1回戦4-1vs日本アビオニクス


 午後からも将棋を指せるのは、5軍と7軍の2チームであった。残念ながら5軍は次の試合で負けてしまう。

●リコー5 C級
3回戦2-3 vs朝日新聞2


 リコー1は3回戦のNEC戦を前に決勝トーナメント進出を決めていた。
 そのために気合いが入らなかったのか、NECに2-3で負けてしまった。このことが後で重大な結果をもたらす。



【S級予選リーグ結果】

 S級の予選リーグは以下のような結果だった。

●Aブロック
1位 プロセス資材12−1 勝ち点10
2位 リコー12−1 勝ち点9
3位 NEC11−2 勝ち点7
4位 成和産業1−2 勝ち点4

●Bブロック
1位 ジュポン化粧品2−1 勝ち点10
2位 東芝1 2−1 勝ち点8
3位 日立 2−1 勝ち点7
4位 富士通0−3 勝ち点5


 S級は各ブロックの最下位チームのうち、成績の悪かった方のチームがA級に陥落する。
 今回は富士通が貧乏くじを引いた。今回、富士通チームは石井氏/出沢氏/赤畠氏/島氏/中治氏/浜氏が出場していない。
 この6人だけでチームを作って職団戦S級で優勝してもおかしくないメンバーである。聞く所によると、石井氏/中治氏は富士通の子会社で別チームを作るとか。

 主力がこれだけ欠ければいかに層の厚い富士通でもS級維持が難しいのだろう。幹事の奥村さんも苦悩のチーム運営だったろう。

 S級以外の話しをしよう。
 そのころA級の東京リコーは2回戦でアルゴリズム研究所と当たっているはずであった。
 アルゴリズム研究所は前回S級から落ちてきたチームで何度もS級で優勝している。しかし、東京リコーの対戦者の顔には私の知っている顔が一人もいなかった。

 何と、アルゴリズム研究所は1回戦で敗れ、アルゴを破った日立電線が東京リコーチームと対戦していた。
 聞くところによると、アルゴは慰安戦1回戦で不戦敗を喫してしまったとか。
 連敗だと、B級陥落の芽が出てくる。もし万一来期B級に落ちるようなことがあれば、B級のチームが迷惑するが。
 尤も、A級に残ってもA級のチームが迷惑する。強すぎるのである。


【S級準決勝】

 S級に戻ると準決勝が始まっていた。
 準決勝の組合せはジュポンvsリコー1、プロセスvs東芝になった。リコー1の準決勝の対戦チーム、ジュポンは今期からS級に登場し たチーム。元アマ名人ありアマ竜王ありのスーパーチーム。今期、鳴り物入りの登場である。

ジュポンとリコー1の組合せは以下のとおり。

 リコー ジュポン  
大将山田井之上 矢倉
副将菊田渡辺徳之矢倉
三将野山上岡上岡振り穴
四将瀬良渡辺健弥角不換棒銀
五将佐々木青柳矢倉


 大将戦はこんな将棋だった。いつものことだが、山田君の将棋は戦形を一言で表すのが難しい。この将棋は比較的普通だが本当に「矢倉」と書いていいかはあまり自信 がない。

 図は先手の山田が45歩と仕掛けたところ、私の目にはここでは先手の作戦勝ちに映る。ここから仕掛けに成功し91手で難敵を倒してしまった。



結果は

 リコー ジュポン
大将山田○井之上 ×
副将菊田○渡辺徳之×
三将野山○上岡×
四将瀬良○渡辺健弥×
五将佐々木×青柳○


いよいよ、決勝戦。この時点で2軍以下のチームではリコー2(A級:準々決勝)

東京リコー(A級:準々決勝)、リコー7(E級:慰安戦4回戦)に挑んでいた。



【S級決勝】

 決勝は予選1回戦で対戦したプロセス資材、組合せは以下のようになった。

 リコー プロセス
大将山田小林
副将菊田河上
三将野山石田
四将瀬良遠藤
五将佐々木青野


 プロセスチームのエースは目下アマチュア最強とも言われている遠藤氏。
 遠藤氏のここまでの成績は、

1回戦vs山田(リコー)大将 ○
2回戦vs伊藤(NEC)副将 ○
3回戦vs宮本(成和)三将 ○
準決勝vs久保本(東芝)三将 ○


ここまで全勝。異論もあるかもしれないが、ほぼ各チームのエース級に当たりに行ってきっちり勝利を収めている。この辺がプロセスの団体戦運営の巧みなところかもし れない。

 見てのとおり大将にいつも座っている訳ではない。席順にこだわりを持っていないのである。

 そして決勝はリコーの大魔神、瀬良氏との対戦になった。

決勝vs瀬良(リコー)四将


 戦形は当然遠藤氏の振り穴。
 図から55歩同飛54銀35飛34歩同飛65銀と進んだ。




 瀬良氏の後の感想では後手55歩が指しすぎとの事。将棋は遠藤氏の銀と金が先手の玉に襲い掛からないまま終わってしまった。
 大魔神がアナグマンの全勝にストップを掛けたが、チームの成績はこの1勝止まり。

 観戦している私もそうであったが、ジュポン化粧品を破ったところで、今期の職団戦は終わってしまったような気持ちになっていたのかもしれない。となると予選3回 戦にNECに負けて、準決勝でジュポンと当たる組合せになったたことが敗因の一つになる。職団戦は難しい。

 なんと、リコー1が負けたと同時に他で頑張っていたリコーチームも負けてしまった。

●リコー2 A級
準々決勝1−4vs 特別区職員文化会

●東京リコー A級
準々決勝1−4vs 毎日コミュニケーション1

●リコー7 E級
慰安戦2回戦3−2vs 日立物流
慰安戦3回戦4−1vs 日本航空電子
慰安戦4回戦2−3vs 日立ビジネス


みんな酒を飲むタイミングを合わせたのかもしれない。

みんなが痛飲したのは言うまでもない。



(完)$B(
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