【盤友引力に引かれて、のこのこと】
「盤友引力」という新宿区国際交流協会登録団体がある。この名前を初めて聞いたのは、つい一ヶ月ばかり前だ。将棋部の合宿の場所探しをしているときに、「マホロバマインズ」の担当の方からだった。今回のパーティを谷川俊昭さんから紹介されて、ホームページを見てみた。
それによると、97年の5月に発足、ゲームを通じて国際交流と社会福祉参加を目的とする団体とある。外国人・子供会・老人福祉施設などに呼びかけて幅広い交流を目指している。囲碁、オセロ、チャンギ(韓国将棋)、チェス、スクラブル(SCRABBLE)、ラミィキューブ(Rummikub)、五竜陣(Pentragon)が、主流のようだ。
団体の趣旨や目的は、うまく飲み込めないが、まあみんなで楽しくやろうということのようなので、今日は一日、楽しんでみることにした。朝10時にはかなり人が集まっていて、よく見るとアジア人を初め外人が結構多い。それも、若い男性が多い。女性が少ないのが、ちょっと残念かな。
会場には、それぞれのコーナーが設けられており、自由に観戦・参加できるようだ。私の場合、やはり手始めは将棋からとなる。
【負けるときの予感、嫌な感触】
将棋の受付カウンターにはキュートなレディーと、可愛いお子さまがいた。マリンブルーのストライプのワンピースを着たその子は、小学2年生で、運営に参加しているの年齢としては最年少だろう。よく見ると、谷川さんのお嬢さんの愛ちゃんだ。前に会ったのは杉の宿だから2年ぶりかな。もう、小学2年だという。子供はちょっと見ないうちに、どんどん成長する。
吉川さんという方と指した。振り飛車だったので、何となく居飛車穴熊にしてみた。いつも急戦を選ぶので、穴熊は久しぶりだ。やはり序盤は苦しくなって、困ったが、途中で、飛車切りの暴挙が成立したようで、指しやすくなった。
最後、即詰が有ったことを後で谷川さんに指摘されたが、気づかずに逃がしてしまい、トロトロしているうちに、食いそうだなあと思っていた角筋からの桂馬であっさり終わってしまった。その筋は読んでいるのに、何で食うのか不思議だ。
この方は、後で、もう一度登場する。
【入りやすいゲーム】
私は、将棋以外では、ルールなどきちんと分かっているわけではないが囲碁・連珠・オセロ・チェスは一応ゲームをしたことがある。だから、この系統は入りやすい。初めにはまったのは「即興将棋」(または河北将棋)というものだった。作者の河北さんに教えて貰った。
ゲームはそれに興じる人と、作って楽しむ人とがいるようだ。オセロも日本人の創作だ。今回も、ご自分で創作したゲームを持ってきている方が何人かいらした。
この、即興将棋は、一口にいえば麻雀と将棋を組み合わせて簡略にしたものだ。
盤は、将棋盤に似て横が7マス縦が9マス。初形は自陣の2段目中央に玉が居るだけのシンプルさだ。あと20個の駒が麻雀のパイのように伏せて積み重ねてある。飛車、角が1枚ずつ、金が2枚、銀・桂・香が各3枚、歩が7枚有る。
相手の玉を詰ますか、相手の初形の玉の位置に自玉を持っていくかすれば、勝ちとなる。
手番のときは、伏せてある駒を1枚持ってくるか、盤上の駒を動かすか、持ち駒をうつかの選択だ。持ち駒は相手に見えない。ここがくせ者だ。
やってみると、面白い。ついつい盲パイをしてしまうが、つるつるなので意味がない。どんな駒を引いてくるかによって、ほとんど勝負は決まりそうだ。運に左右されるので、将棋をならい始めた人向きだろう。
丁度、将棋部内で、持将棋について話題になっているので、このゲームのタッチダウン方式に興味がわいた。先崎ルールが、良いのではないかと思っていた矢先、このゲームをやってみて、やはりタッチダウンの先崎ルールが面白いように思った。
詰ますことよりもこちらをメインにして「タッチダウン将棋」という名前にしたらどうだろう。
これは、さっき将棋をやった吉川さんの創作だ。ラーメンで有名な佐野にお住まいで、連盟の大盤解説会には、年に30回は来ているという。もともと学校の先生で、今は塾をやっているそうだ。
このゲームは、一口でいえばじゃんけんとダイヤモンドゲームのミックスだ。
盤は、ダイヤモンドの線が引いてある。駒は、グー・チョキ・パーの3種類とシンプルだ。敵と接したときの手番の人が、駒のじゃんけんの勝ち負けによって勝ちならとって進める。負けなら、退却しても良い。
最後は、敵の城に入って勝ちとなるので、これもタッチダウン方式だ。わりとあっさり勝負がつくので、面白いがまあそこそこ遊べるという感じだ。じゃんけんのルールさえ知っていれば簡単に、覚えられる。
イスラエルが発祥のゲームとのこと。一口でいえば、トランプのブリッジを二組使ってやり、カードの代わりにタイルというものを使う。始めるときに、カードをじゃらじゃらかき回すところが麻雀に似ている。
タイルと呼ばれる1から13迄のカードが色違いで4種類有る。それのジョーカーが1枚。トランプならこれで、53枚だが、ラミィキューブは同じものが、2つずつ有るので、合計106枚だ。
ブリッジのように、同じ色で、3・4・5のようにそろえれば、場に出せる。最初になくなった人が勝ちとなるわけだ。
いいなあと思ったのは、手番の人に、タイマーが回ってくるので、必ず1分以内に、処理をしなければいけないところだ。これなら、長考派がいても、遅くていらいらしなくて済むから。
将棋の観戦記者で「紅」であまりにも有名な東公平氏の創案だ。途中で、お見えになったときに、折角谷川さんに紹介して貰ったのに、気の利いた挨拶のできない自分の不器用が、歯がゆい。
一口でいえば、チェッカーと将棋のミックスで、敵を飛び越えればその駒をとれる。王様に相当するのが「たこ」だ。そして、蛸を捕るか、敵のたこつぼに入れば勝ちだ。
わりと単純なので、子供向きかなあ。
【入りにくいゲーム】
他は、時間がなかったせいもあるが、五竜陣、ソクラテス、チャンギ、は全く分からなかった。五竜陣は5つの異なった形の駒を組み合わせながら、敵地にタッチダウンをするもののようだ。
ソクラテスというのは、更に3種類のゲームに分かれているようだったが、ほとんど見ていないので、これ以上書くことがない。
チャンギは、漢と楚の戦いということで、将棋に似ているのだろうが、教えてもらう時間がなかった。
バックギャモンは、もう少し時間が有れば分かりそうだったが、駒の進め方が今ひとつ分からない。手番のたびにさいころに左右されるので、運の要素が強そうだ。高級双六といった趣だ。
スクラブルは、クロスワードパズルのようなもので、ルールは難しくないがボキャブラリーがないと勝てそうにないので、さわらなかった。君子危うきに近寄らずだ。これは、セクハラ対策の格言なのだろうか。英語版だけでなく、日本語版もあった。
【世界の将棋ソフト】
著名な将棋ライターの湯川博士氏が執筆・編集の「世界の将棋」というユニークなソフトが、デモ用に置いてあった。チェス、中国象棋のチャンギ、韓国将棋のシャンチー、タイのマックルックそして将棋と5種類の解説と、実戦譜や詰将棋が入っている。駒の進みかたがでてくるので、わかりやすい。他に将棋百科事典機能もある。
会場では、閉鎖してしまった新宿の「ザ・将棋」のスタッフのひとりに出会った。しかし、滅多に行かなかったので、忘れられていた。
【指導将棋】
せっかくの指導将棋があったので、教えて貰った。四間飛車に対して、鷺宮でいき、一時角桂交換で、ひどかったが、飛車桂交換で盛り返し、結構いい勝負になったが、最後はやはり、足りなかった。もちろん指導棋士は元アマ王将の谷川氏だ。
【ラスベガス】
今日は国際交流の場面は出番がなかったが、こういう各種ゲームに触れていると、どうしても心はラスベガスに飛んでいく。作家のS氏は、必勝法に近いものをつかんで、試し中ということを何かで読んだような気がするが、今も勝ち続けているのだろうか。
今日、府中の東京競馬場では、日本ダービーで武豊がアドマイヤベガで差し切り、二連覇を達成したという。ギャンブルの夢はふくらむ。この前、銀座の交差点で密かに購入した三億円の宝くじが、妙に当たりそうな気がしてきた。何故って、今まで運というものを全く使わずに歩んできたから。
(完:記99年6月6日)