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イベント・レポート

第11回 全国障害者将棋大会:自戦記

月日:1998年10月4日(日)

場所:東京都港区田町「東京都障害者福祉会館」にて

リポータ:椋木 陽一郎 e-mail : Yohichiroh.Mukunoki@nts.ricoh.co.jp

大会前夜

さわやかな秋晴れの朝

開会式に遅刻の事

緒戦

耳の聞こえない方との対戦

いよいよ北原さんとの対戦

決勝戦

終りに



大会前夜

 大会前夜、私は茨城県は霞ケ浦のそばにあるロッジでバーベキューを食べながら、明日の大会に参加するかどうか迷っていた。大会事務局をされている西田さんには、「前日の夜は茨城で飲み会なので、参加できそうもない場合は当日の朝に連絡をします」と伝えてあったので、とりあえず明日の朝の気分で参加するか決める事にして布団にもぐった。

さわやかな秋晴れの朝

 ロッジ内には子連れで来ていた人もあり、朝早くからどたどたとかなりにぎやか。おかげで普段は絶対に起きない6:30には目がさめてしまった。結局4時間くらいしか眠れなかったが、外はさわやかな秋晴れ!天気のせいか気分も爽快だったのでノータイムで大会参加を決める。朝の常磐高速を東京へとひたすら車を走らせた。

開会式に遅刻の事

 余裕を持って出発したつもりが途中に渋滞もあって、会場に付いた頃には既に一回戦が始ろうとしているところであった。リコーが後援している大会なので、開会式ではきっと谷川さんがなにかあいさつをされていたことと思うが、残念ながら聞き逃す。

 私はこの大会は2年前以来2度目の参加だが、その時に比べてかなり参加者が増えているような印象を持った。加藤一二三先生が毎年この大会には顔をお出しになっておられたが、今年は日程が合わなかったのか所司先生がおみえになっておられた。

緒戦

 一回戦は車椅子の年配の方と。都内在住の方で普段は墨田区の道場で腕を磨いているとのこと。「車椅子で道場行くのは不便ではないですか?」とたずねると、その道場は車椅子の面倒をきちんとみてくれるとのこと。そんな道場がたくさん増えると良いなと思う。

 将棋は相振り飛車になったが、2〜5筋まで位を取られて実に息苦しい展開。どこから手を出したものやら困ってしまい、とりあえず端に手を付けてみたがたいしたことはなく、逆に反発を食ってやや指しづらい形勢に。しかし終盤に馬を自陣に引きつけられると困っていたところを、反対に私の自陣深く成り込んできたので、いっぺんに形勢が傾き私の勝ちになった。序盤が消極的だったものの、まずまずの出だし。

 続く2局目は角換わり将棋になったが、序盤から快調に攻めつづけて快勝。気持ちよく昼休みに入る事ができた。

耳の聞こえない方との対戦

 続く3局目の手合いを付ける際に、手合い係の小島さんから「お相手の方は耳が聞こえませんので」との注意を受ける。耳が聞こえなくてチェスクロは大丈夫かな?とちょっと心配。

 将棋は、変な出だしから、石田流に私が玉頭位取りで対抗する形に収まる。玉頭で小競り合いの後、相手の角頭を攻めながら駒得を果たすという我ながらうまい攻めを見せ、私の方がかなり優位に立ったつもりだった。しかし、この後なかなか決め手をあたえてもらえず、なんだかわけのわからないうちに終盤へとなだれ込んだ。既に、相手は30秒の秒読みになっているが、きっちりと2〜3秒前には指してくる。「耳が聞こえないのに良く秒がわかるなあ…」と感心しているうちに自分も秒読みになる。相手の食いつきを私がひたすら振りほどこうとする展開が続いたが、なんだか雲行きが怪しくなってきたので、勝算はないが敵玉を詰ましにかかった。結局20手くらい追いかけまわしてなんとか討ち取る事ができた。ちょっとラッキーな勝ち方だった。

 お互いに力を出し合った良い将棋だったので、たっぷりと感想戦をやりたいところだったが、残念ながら私は手話ができない。最後に相手の方は「チェスクロはどうも苦手だ」というような事を身振りで私に伝えた。チェスクロ使用の差で勝敗が分かれたか。

いよいよ北原さんとの対戦

 前局の耳の聞こえない方が北原さんの方を指して「次の相手はあの人だ。勝ってくれ。」と身振りでエールを送ってくれた。負けられないな、と思う。

北原さんは知る人ぞ知る詰め将棋作家で、この大会で何度も優勝されている強豪の一人。 お会いするのは初めてで、白髪の芸術家のような雰囲気漂う方。

 ここからは棋譜を取ろう、ということでフェアリープリンセスの女性の方が私の横に座る。正確に棋譜を取ろうとしてか、かなり私のそばに近いところに座られたので、いろんな意味で指しづらさを感じた。

 将棋は相矢倉から先手の私が桂損しながらも一方的に攻めまくる展開となり快勝。北原さんには不出来な将棋だった。この大会に出るからには、この人に勝つのが目標だったので、とてもうれしかった。

決勝戦

 2年前は4回勝ったところで優勝が決まったが、やはり人数が増えたのか全勝者が二人出てプレーオフになる。しかも時間がないので15分切れ負けだとのこと。あちゃー。

 とりあえず切れ負けは嫌なのでノータイムで指し進む。将棋は5筋位取り中飛車(ごきげん流と言うのかな?)に私はいつものように舟囲いから右銀を46へ繰り出して対抗した。相手はどうやら穴熊にしようかどうしようか迷っている風で駒組みがぎこちない。そこを私は左の銀も前線へ繰り出し抑え込みにかかり、かなりの作戦勝ち。終盤に玉頭から反撃を食ったが、その反動を利用して寄せ切り快勝。これにて優勝を決めた。

終りに

 各クラス4位の方まで表彰を受けた。商品も年々良くなっているようで、私がいただいた盾も、家に帰って2年前のと比べると一回り大きくなっていた。あと、とても重たくて大きな箱もいただき、お手伝いに来ていた西川さんがしきりと中を気にしていた。ちなみに中はコーヒー茶碗のセットだった。

 表彰式後、谷川さんが参加者から記念撮影をせがまれているのが見えた。この大会は大勢の方々の善意の上に成り立っている。殺伐とした世の中だが、この大会の会場内だけは善意でいっぱいになっていると感じた。今後も更にこの大会が発展していく事を祈るばかりだ。

 最後になりましたが、ボランティアでお手伝いに来られていた多くの方々にお礼申し上げます。ありがとうございました。

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