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イベント・レポート

第7、8回 ノータイム将棋番組収録

   〜〜〜テレビ番組制作現場、その進行と熱気〜〜〜

月日:98年某月某日

場所:リコー新横浜事業所1階ロビー

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


 

【みすぼらしい改札 vs 輝く改札】

 16ヶ月ぶりにJR横浜線で新横浜駅に降りた。昨年の5月まで通っていた頃の改札口はみすぼらしかった。イオカードも使えなかった。それがすっかりきれいになっている。床も照明も真新しくまぶしい。もちろんイオカードだってスイスイだ。

 

【屋外 vs 屋内】

 これまでの番組は、臨海副都心の斬新なフジテレビ前の屋外で収録していた。今回は、リコー新横浜事業所ビルの1階ロビーだ。制作側は、とても楽なそうだ。まして今日は、台風10号の余波で大雨だ。

 横浜アリーナの並びに富士通のビルが二つ建っている。アリーナの向かいに19階建てのリコービルがある。1階は広いロビーで2階までの吹き抜けと、豪華な作り。ここを撮影場所に決めたのは、広報・宣伝のセンスと閃きだ。クリーンヒットだ。

 

【地上波 vs 衛星波】

 普段我々が見ているテレビはいわゆる地上波のものだ。今日の番組は、SKYPerfecTVという衛星波のものだ。我がリコー将棋部でもこれを見ることのできるのは今井一人のようだ。まだまだマイナーだが、それだけに新しい冒険もやりやすいだろう。

 

【将棋 vs ノータイム将棋】

 アマチュアの将棋大会では、運営進行の都合上「30分切れ負け」等というルールで行うものもある。私は、これは将棋と似て少し異なるゲームという気がしている。ペア将棋やリレー将棋も盤上のルールは同じでも、ゲームとしては異なるものだと思う。そしてそれぞれ楽しめればいいと思う。

 この「ノータイム将棋」も、やや異なるゲームとして楽しめそうだ。高木美樹さんという素敵なプロデユーサーが発案したものらしい。魅惑的な表情は、はがゆい唇のマドンナという感じがする。普段将棋に真剣に取り組んでいるものには、ちょっと考えられない趣向だ。主なルールはこんなところだ。

 

【熟女 vs 女子大生】

 第7回の収録は、フェアリープリンセスの熟女対ピチピチの女子大生ということだ。フェアリープリンセスは、女性だけの将棋愛好家の集まりで、社団戦でも活躍している。女子大生チームは、今年の春の学生個人戦の優勝、準優勝というつわものだ。

 

【足立由美 vs 南しずか】

 たたみ2枚の対局場に、立派な盤が置いてある。その向こうにテーブルがあって、司会者の自称芸能界名人渡辺徹と解説者横山澄恵女流初段が座る。コーナーに秒読み係の早稲田の河合君、応援者はその周りを取り囲む。

 足立由美さんは、「同情するなら金をくれ」で有名になった役者と同名だ。1年半ほど前にご主人の転勤で鴻巣にきたが、それまでは九州にいて牧野正紀と親しいそうだ。ライオン丸も、奄美大島のべっぴんさんやら足立さんやらなかなか隅に置けない。3人のお子さんがいるという、優しくも芯の強い愛らしい方だ。胡桃割り人形のイメージがするので、勝手に、胡桃割りのマドンナと呼ばせてもらおう。

 南しずかさんは、東海大1年で宇宙工学科だ。ボーイッシュな茶ぱつにグレーの半ズボン、黒のアノラックで、眉がすっきりしている。春の学生個人戦で準優勝している。最近リコーを退社した元練馬名人南尚文の隠し子ではなくて、なんと南こうせつのお嬢様だそうだ。宇宙に遊び、こうせつとくれば当然、かぐや姫のマドンナだ。なお、命名者は谷川俊昭。

 胡桃割りのマドンナは、ペア将棋の練習も兼ねて、3時間前に小野さんから教わった角換わりからの菊水矢倉を目指す。これに対し、かぐや姫のマドンナは棒銀から速攻を目指す。

 支部名人の林隆弘さんが足立さんの指し手を見て「強い」としきりにいっている。確かに、5秒にもあわてずに、優勢から勝勢に持っていく指し回しは見事だ。後で小野さんも、たった2〜3回ならべただけなのに、とびっくりしていた。

 かぐや姫のマドンナの敵は足のしびれのようだ。らしくあぐらでも良いのにと思った。

 

【小野三枝子 vs 馬場さやか】

 アマ女流将棋界のトップランナーしゃきしゃきのマドンナ小野さん登場。今年の2月にアマ女流関西名人をとり、3月には第1回府中桜花杯(競馬ではない、女流の将棋大会)をとってますます好調だ。昨日夜遅くに京都・奈良のお茶会と薪能から帰って、くたくただという。それでも盤に向かえばしゃきっとするのだ。

 しかも、小学時代からの幼なじみだという富士通の強豪大泉さんが、応援に駆けつけているので百人力。この幼なじみのロマンスグレーの紳士は、富士通杯を作った功労者だそうだ。ちなみに小野さんは、高校時代からのお友達と、微妙に申告年齢は異なるのだが。

 馬場さやかさんは立教大学の4年生、春季関東女流名人戦で優勝している。東大将棋部のホームページの人気投票で、第4回、第6回と2度一位という人気者。それもそのはず、ナイスバデイーに可愛い笑顔、明るく元気な姿は誰にでも好かれるだろう。芍薬(しゃくやく)のマドンナと呼びたい。別名貌佳草。

 両者は、過去一度、女流名人戦で対戦し、小野さんが貫禄を見せている。小野さん得意の角換わりから菊水矢倉に組む。馬場さんは右四間から銀を繰り出す。

 果たして、しゃくやくのマドンナが女流名人戦の雪辱なるか。

 

【三枝子・由美 vs しずか・さやか】

 休憩時間に早稲田将棋部の強豪がしずか・さやかチームに対策を授けている。やはり、熟女の宣言通り角換わりから菊水矢倉に進む。右四間から攻め込むしずか・さやか。

 途中、女子大生チームの手番で、駒を取る一手というときに、「3、2、1、はい、とって」という異常な秒読みの声が爆笑を買う。

 また、終盤のきわどい寄せ合いの時に、「手のない時には?」という助言もどきの声援が飛ぶ。この将棋に限っては、それもご愛敬という場面だった。

 

【横山澄恵女流初段 vs 小野三枝子】

 恒例の女流プロ対局。小柄な横山初段が「あの角変わりを受けてたつ」と、果敢なチャレンジ。

 5秒将棋という厳しいルールのなか、しゃきしゃきのマドンナは飛車・角交換の大捌きで豪快に攻めていく。たじたじとなりながらもポーカーフェースで応じる横山初段。「頑張れ」、小野さんに声援が飛ぶ。

 

【デイレクター vs 横山初段】

 番組の最後に「一手詰め」と「三手詰め」のコーナーがあるようだ。デイレクターの指示で、横山初段が正解と解説を言う。テストを一回やってすぐに本番を撮っている。デイレクターとカメラマンはさすがに手慣れたものだ。

 

【司会者 vs 解説者】

 司会は、塩原アナウンサーと渡辺徹。渡辺徹は、キリンカップのペア将棋でも選手として羽生四冠王とペアを組んだり、司会をしたりいい味を出している。将棋が好きで、良く知っている。関西で仕事を終えて新幹線で駆けつけたという。ここは新横浜なのでそういう人にはとても便利だ。

 体も声も大きく、ぴしっと決まるから進行が楽だ。モニターを見て「これがオンエアの画像ですか?」と聞いて画面のずれを指摘したり、ほどほどの突っ込みで笑いを取るなど、この番組にはピッタリのキャラクターだ。

 女流プロが対局しているときに解説役で出てくる早稲田の学生がユニークだ。奇抜な衣装に三枚目で応えている。彼のセーラー服姿や、唐草模様のすっぽり衣装姿を見たければ、スカイパーフェクTVに加入するが良い。

 

【富士通 vs リコー】

 将棋の対局の裏では、広報合戦も繰り広げられている。第8回の収録になって、舞台の右半分に富士通の、左半分にリコーのポスターや看板が並ぶ。

 富士通の広報担当の女性はおしゃれで格好良い。なにやら広報グッズも豊富だ。

 リコーも観月ありさの等身大看板や、MB−1というプラズマデイスプレイを持ち込んで奮戦している。広報部の軽部さんが昼前から来て大奮闘だ。収録が終わったのが9時頃で、それから最後の片づけまで残るという。

 

【伊藤康晴 vs 菊田裕司】

 オープニングは、2階から階段を下りてくるところシーンで始まる。谷川が「リコー」のプラカード、菊田が職団戦S級優勝の楯をもつ。直前の菊田のいやがりようはだだっ子のようで面白かった。社団戦で使っているゼッケンもつけさせられている。応援の私もつけさせられた。

 伊藤さんの石田風の振り飛車に菊田5筋位取り。振り飛車の捌きが見事に決まって菊田大いに不利になる。

 途中、谷川の声援が飛ぶ、「やった、これで逆転だ!」。そういえば、卓球などで、よくこういう声援が飛ぶことがある。自分で「ラッキー」などとかけ声をかけることもある。

 

【出澤浩樹 vs 谷川俊昭】

 つい1週間前の職団戦で、逆の組合せ対決をしたばかりの4人。今度は矢倉に進む。先手出澤さんが攻撃を開始し、谷川が反撃する。

 

【伊藤・出澤 vs 菊田・谷川】

 ペア将棋。リコーの合宿では夜のお楽しみ将棋で、ときどきやっている。なかなか楽しめるゲームだ。しかし、合宿では強いものと弱い者との組合せでやるので、強い同士のペアははじめてだ。

 試合前の作戦はばっちりだ。居飛車なら矢倉、振り飛車なら棒銀でいこう。

 しかし、敵は振り穴で来た。穴グマは予想に入れていなかったので、菊田も一瞬迷うが5秒が予定通り棒銀へ誘う。

 先手が3五歩と仕掛け、作戦勝ちが明らかだ。

 さすがにこのクラスは五秒将棋でも、内容の良い将棋を指す。解説役も、解説兼秒読み役もしゃべるのを忘れて見入っている。周りも声援どころではない。局面についていくのが精一杯だ。

 

【横山澄恵 vs 出澤浩樹】

 アマのトップクラスは奨励会の有段者以上の棋力があるから、ほとんどの女流プロには厳しい。それでも横山さんは矢倉を受けてたつことにした。

 出澤さんは考えるとかえっていろいろな手が見えるので、瞬間浮かんだ手を指すようにしたという。6筋から盛り上がっていく。力強い指し手が続く。横山さんも冷静に指している。

 

【応援 vs 応援】

 フェアリーの応援には小野さんと小学校からの幼なじみという方も来ている。女子大生にはスタッフに参加している早稲田のメンバーが大勢ついている。富士通も、沢山来ている。リコーも、ゼッケンをもってきてくれた山田洋次や紅一点のマドンナ晶ちゃんや羽二重のマドンナが来ている。吉中はデジカメで美人の写真をばちばち撮っている。今井もしっかりゼッケンをつけてサクラをやっている。

 

【柔らかい仕事 vs 硬い仕事】

 簡単なセットと、ライテイング。大道具さんやカメラ3台、音声さんなどのスタッフと、デイレクターの指揮のもと、どんどん番組作りが進む。準備に3時間、1本3時間くらいづつで、柔らかいものづくりが進む。

 私はメーカーにつとめ、ものづくりから販売まで、いかにも硬い。長いこと硬い現場に住んできた身に、柔らかい現場は刺激的で魅力たっぷりだ。

 

 ささやかな宴の後、最終の新幹線で17分プラス2時間の旅に出た。

 

(この番組は10月下旬以降、スカイパーフェクTV フジテレビ721チャンネルで放映されます。

(完:10月18日 記;放映前なので、勝敗は伏せました)


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