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イベント・レポート

第9回 社会人団体将棋リーグ戦 第2日

月日:98年7月26日(日)

場所:長谷工体育館

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


【HOT

 暑い。夏だから当たり前かも知れないが、今年はまだ梅雨明け宣言は出ていない。どんより白い雲におおわれて、蒸し暑い。JR田町の駅から日陰のない第一京浜をそーっと横切る。日陰はどこにもない。日傘をさして歩く男はロビンソン・クルーソーしか見たことがないから、やりにくい。

 やがてNEC本社前の木立の下をゆっくり歩く。ほんのつかの間のオアシスだが、とても有り難い空間だ。

 顔や首の汗をハンカチで拭き、「あそこの交差点さえ越えれば冷房の効いた体育館だ」と、肌ににじむ汗に言い聞かせながら、ゆっくり渡る。

 体育館。広い、しかし大勢居る。おかしい、暑い。もしかして、今日は冷房なしなのか?

いつもの隅っこに仲間が数人居た。みんな暑がっている。扇子を出しているものもいる。「しまった」扇子を忘れた。汗は容赦なくシャツを濡らす。心なしか呼吸も苦しいようだ。

 今年は、昨年よりもチーム数が増えて、112チームだ。7人制だから800人は軽く越しているだろう。さしもの長谷工体育館もキャパ的に限界を超えている。もっとも、冷房は、対局中には効いてきたので、何らかの事情でスイッチが入るのが遅かったのだろう。

 この大会は、レベルが高いし、チーム形態が自由なので、とても面白い企画だ。さらなる発展を願う一参加者として、会場の狭さを何とか解決して欲しいと思う。対局者の後ろも通れないほどのせまさをせめて一人くらいは楽に通行したいものだ。キャパを取ってチーム数を減らすかチーム数を取ってキャパの広いところにするか。辛い選択の時期に来ているようだ。神宮球場では雨の時に困るが、東京ドームのようなところを安く貸してくれないものだろうか。

 


【2軍】

 リコーの2軍は、3部にでている。初日3勝1敗と好調な出だしだったが、今日は1勝3敗で通算4勝4敗のイーブンになってしまった。2軍チーム上位のライエルと田中が欠けたのが痛い。そして、今年も大将神話が生きているようで、今日の1勝3敗は大将のそれと完璧に同期がとれている。

 対戦成績を見ると、今期の上位5チームとは0勝2敗。さすがにこの辺は昨年のリーグ戦で2部から落ちてきたか、2部に上がりそこねたチームなのでなかなか手強い。

 下位5チームに対しては、1勝2敗である。ここは昨年4部から昇級を果たしたか落ちるのを踏みとどまったチームだ。昇級を果たしたところは勢いがあるし、場合によっては手合い違いに強いチームが居ることがある。初参加は下から上がってこなければならないからだ。

 あとは、中間の6位から11位のチームにどれだけ勝てるかだ。今までのところ3勝0敗と、稼いでいる。

 こうして、層別に計算してみると、残り8試合を、うまくいって5−3、下手をすると、2−6という感じになる。すると、うまくいくとベスト8、下手をすると4部との入れ替え戦だ。

 個人別には、小林が6勝2敗と元気だ。勝ち越しは田中、吉中と3人だけ。ライエルが五分で7人が負け越し。通算23勝33敗と、大きく負け越している。

 夏合宿で鍛え直してベスト8を目標に頑張ろう。頑張ってね。

 


【しびれ銀】

 今回は、私も1勝3敗とふがいなかったので、内容についてはふれたくない。というか、棋譜を思い出せないので、触れられない。勝ったときには割と簡単に棋譜も思い出せるのに。

 何しろ2局目に当たった、富士通戦がショックだった。私は、ごきげん流の中飛車をやってみようとして、角道を開けあったあと端をついたらとことんつきあわれた。前に、どこかで対局した人に、こうやって端をつきあわれたらどうすれば良いんですかねと聞かれて困った図だ。  

 結局居飛車にして、相手は立石流に来た。何手か進んでみると、いつものように作戦負けになった。仕方がないから玉頭を盛り上げて少し盛り返したかなと思ったとたんに、ビシイイっと交換した銀を玉頭の要所に打たれて、しびれてしまった。投げるのも悔しくずるずる指してしまった。

 後で聞いたら私が当たった人は有名な強豪だそうだ。そういうことは知らない方がよほどいい。このチームには昨年4部で当たって1勝6敗だった。今年は、3部で当たって、0勝7敗だった。

 どうせ強いのだからと、早く気持ちを切り替えるべきだったが、結局次ぎもその次も茫然自失状態で、うまくいかなかった。メンバーにもそういうところがあったのではないかなと思う。隣で圧倒的にぶっ飛んでいた庭野曰く「リコーは茫然自失、館内は高温多湿」。

 まあ、強い人に教えてもらったわけなので、次回は、もっと強くなっているだろう。

 


【3軍】

 4部は、昨年の赤、白の他に青ができてそれぞれ16チームとすっきりした。初参加のリコー3軍は、今日は1勝3敗で通算3勝5敗と苦しい。特筆すべきは6戦全勝の北習志野F研Uに勝ったことだ。

 個人では、伊藤が4勝、竹中、木村が3勝と勝ち越している。全体では23勝33敗と、2軍と同じなのにはびっくりする。幹事を任されている伊藤君は、年齢が若いので、みんなに気を使って、人選に苦労しているようだが、遠慮しないで、自分の思うようにやればいい。そして狙いと結果とを見比べて、次の対局にいかしていけばいい。

 団体戦は、並び順だけでも全く違う結果になることがあるようだ。初日が2−2だったので、少し安心したのかも知れないけれど、社団戦は4部でも相当強いから、先ずはイーブンを目標に暴れてもらいたい。

 


【1軍・インド修行・県代表】

 今日は2勝1敗とまずまずだったが、初日のまさかの3連敗が重くのしかかって通算2勝4敗の8位だ。個人合計も20−22と負け越している。実力者揃いなので、これから上位陣を苦しめ、優勝争いを混沌とさせるだろう。入れ替え戦の影におびえながら…

 インドの長期出張から帰ってきたばかりの菊田がアマ名人戦の神奈川大会で惜しくも敗れた。さあ、社団戦と思っていたら、またインドにさらわれてしまった。一説によると、髭を生やしターバンを巻いて修行しているというが、案外インド美人の研究でもしているのではないかと思う。山があれば登らなければならないし、美人がいれば埋没しないわけにはいかないのだから。

 キャプテン野山が本人としては久しぶりにアマ名人戦の大阪代表になった。技術面よりも精神面が大きいという。前は、「負けるんじゃないか」とか「この相手とはやりたくないな」などと、余計なことが頭に浮かんだという。それが、今回は、朝家を出るときに「今日は勝てる」と感じたという。

 仕事も忙しいし、将棋部の主将もこなし、更に大阪で正棋会を切り盛りしている。最近正棋会のホームページも立ち上げ、大活躍だ。その精進ぶりはおしてしるべしだ。おまけにこのごろは他のホームページの掲示板にも出没しているようだ。

 私は、リコー将棋部にいながら、インターネットに出会わなければ、リコー内外のトップアマに接触することもほとんどなく、のんべんだらりと過ごしているところだった。この幸運を活かして、ホームページを通じて少しでも感動を伝えられれば嬉しい。

 


【北海道】

 リコーに入って2年目の期待の大型新人豊島君がこの試合を最後に、リコーをやめるという。そして北海道に住むという。来年には結婚もする、彼女も賛成らしい。

 びっくりマークのエクスクラメーションだ !!! 

 本人は、いろいろ考えた末なのでとても短い言葉では説明できないという。だから、私の想像だが、同じ生きるのなら、広いところでのびのびと暮らしたいというのが主旋律だろう。最も本人が語り尽くせ無いというのを、語ろうとするのは暴挙だから考えるのはやめておこう。

 はっきりしていて、好感の持てるいい男だ。将棋も強いし、文章もうまい。学生将棋連盟の委員長もやっていたし、早稲田将棋部の主将もやっていた。何よりも、彼が通っていた高校のそばを私が毎日のように通るので、嫌でも顔が浮かぶのだ。身近に会えなくなるのはとても寂しいが、広い大地での今後の活躍が楽しみだ。

 


【アマの生活 そして 空想】

 昨年の南といい、今年の豊島といい、鮮やかな決断をしてくれる。呆気にとられ、我が身を振り返り、自分はこれで良いのかと痛切に思う。それでも日々の忙しさとくたびれに便乗してその思いは毎日1センチずつ棚上げされていく。

 アマチュアの将棋界は、アマの生活が如実に反映される。本業や家庭とのバランスを取りながら将棋に向かっている。中には、その精進でプロに勝るとも劣らない人達もいるだろう。

 プロは当然対局最優先で生活の組立がなされるだろう。もし、将棋が技術だけならアマは精進しているプロには勝てないだろう。しかし、アマは、実社会での生活を通じて心身共に鍛えられる機会が多い。

 技術の他に精神力や体力が勝ち負けの要因なら、かなり強いアマがプロに勝っても良いはずだ。現にたまに勝つことがある。特に、プロにはアマに負けられないという余分なプレッシャーもかかることだろう。

 プロが門戸を狭く閉ざし自分たちの利権を守っているうちにアマの技術が少しずつ追いついてきているようだ。それは双方にとって良いことだと思う。競合がいなければ独占企業となり何れは内部から崩壊していくというのが良くあるパターンだから。

 女流プロも清水三冠王を筆頭にかなり迫ってきている。コンピュータ将棋も最近早指しが強いと評判の東大将棋を始めどんどん強くなっている。今の竜王戦はアマや女流プロにも門戸を開いているユニークな棋戦だ。こういうのが増えれば、アマの励みになるし、プロにもいい意味での刺激になるのではないだろうか。ふと、コンピュータ将棋が早指し選手権などに出てくれば面白いだろう等と空想は広がる。

 


(完:記98年8月1日) 


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