event-0027

イベント・レポート

第1回 国際将棋交流会

日時:1997年2月2日(日曜日)

場所:東京 千駄ヶ谷 将棋会館

リポータ:西田文太郎 e-mail : nishida@cs.ricoh.co.jp


 立春を直前に感じさせるように、穏やかな冬の太陽がほのかにセーターを暖めてくれる。
 神宮外苑は、秩父宮ラグビー場で『全国社会人ラグビー 決勝 東芝府中対三洋電機戦』や、東京体育館の『東レ・パンパシフィックテニス 決勝 ヒンギス対グラフ戦』等で、大勢の人が流れている。
 何か良いことのありそうな予感を胸に鳩が森神社の将棋堂にちらりと会釈をして連盟に行く。
 折しも連盟の正面前のポーチで、大きな熊さんのぬいぐるみを着た人の撮影をしている。
 周りの人の制服から警察の交通安全のコマーシャル用と読んだ。

 千駄ヶ谷の日本将棋連盟2階の研修室にはアメリカ、オランダ、中国、韓国などの将棋好きな人達が溢れている。日本人の愛棋家も沢山居る。
 おなじみのプロ棋士の顔も嬉しい。
 The International Shogi Popularization Society = ISPS(将棋を世界に広める会)主催の第1回国際将棋交流会が開かれている。

 受付で登録をすると、本部で対局の手合いを付けてくれる。
 私が初めに当たったのは、シェリー・フィリップさんで、アメリカ人だった。
 相横歩取りの△3三角戦法で、途中受け損なって負けてしまったけれど、読みがほとんど一致していて面白かった。
 私が基準にはならないけれど、外人でも強い人が居るものだ。

 チェスの強豪が将棋を覚えるケースが多いようだ。
 中国、韓国、タイ等の将棋も面白そうだ。
 それぞれの国に行くときに言葉を覚えるよりもその国の将棋を覚えていくとより深く交流できると韓国の人が言っていた。
 ライターで、主催者のスタッフの湯川博士さんも、各国の将棋をプロ棋士にも呼びかけて広めているそうだ。

 早めに来ていた高橋和女流初段は、いつもの愛くるしい笑顔を振りまきながら、取材できている週刊将棋の中島さんと松本さんの助手の、にわかカメラマンとしてパチパチ取りまくっている。
 いつも取られる側なので、楽しそうに外人めがけて生き生きとしている。
 やがて原田泰夫九段と大野八一雄六段が見えて、三人のプロ棋士による三面指しの指導対局も会員同士の対局と平行して始まった。
 準リコー将棋部員(?)のライエル・グリンベルゲンさんが和さんと平手で指している。ライエルさんが押し気味だったが、中国の美人や韓国の美人に目を奪われて、目を離しているうちに逆転されてしまった。

 「きれいな人に花を持たせて偉いじゃない」
と言ったら、
 「でもやはり勝ちたかった」

と悔しそう。分かる分かる。

 休憩に部屋の外に出ると、東京リコーの藤森保さんがタバコを吸っている。
 谷川兄の素敵な奥様と可愛い愛ちゃんも来ている。
 準リコー将棋部員の藤森ジュニアは、連盟の道場で弐段で指している。もうすぐ私などかなわなくなるのが悲しい。
 そういえば、今日の交流会に女性と学生は僅かに参加しているけれど、子供が居ない。 招待ででも何人か参加してくれれば、また違った広がりが出ると思う。

 英国BBC放送の金髪長身の美人キャスターが取材に来ていて、カメラに向かっていっぱいしゃべっている。ベージュのパンタロンスーツがよりスリムに見える。外人特有の表現豊かな報道ぶり だ。
 なんと囲碁・将棋ウィークリーの古作さんの声が聞こえる。
 私が負けたフィリップさんが原田九段と飛車落ちを指した。インタビューしている。

 「将棋の何処が面白いか」
 「難しいところ」

 などとぶっつけ本番の会話。今度の2月8日のNHK衛星放送の囲碁・将棋ウィークリーが楽しみだ。

 まもなく森内八段が登場し、やがて最後にやってきた北島忠雄四段に私も指導してもらうことができた。飛車落ちでお願いした。
 右四間定跡から仕掛け玉頭の傷をつかれたけれど何とか敵玉頭に迫り寄せきることができた。我らがウエブマスターの小川さんにビデオも撮って貰ったし朝の何か良いことありそうな予感はこれだったのか。

 表彰式、といっても全員に賞品が出て、5時になった。
 懇親パーテイーの司会は谷川俊昭さんの中学からの同級生の山田さん、外務省で忙しくペルーやカナダやあちこち飛び回っているとか。
 アシスタントにピンクの着物姿があでやかな加賀さやかさん。キングダム会長でベレー帽のマドンナなのに今日はかんざしにお太鼓の帯。
 各国の人が将棋への思いを語ってくれる。

 アトラクションにマジックキャッスルの柳田昌宏さん率いるWIZARD'S INNの小林恵子さんと秋元正さんがテーブルで、目の前でマジックを見せてくれた。
 秋元さんのマジック。
 先ずは、今日の予算をあらかじめ書いた封筒を置き、観客の三人にそれぞれ数字を書いてもらい合計がその封筒に書いた数字に一致する。お見事。
 更にあらかじめ書いた6九竜が「光速の寄せ」の観客が選んだページの問題の答えになって いる。これもぴったし。更にカードの裏が赤いものの中に青が一枚入っていて、それがいつの間にか全部赤になったり青になったり。旨いものだ。

 小林恵子さんは去年のNHK番組の、投了からの羽生対決で、唯一勝ち星を挙げた将棋好きのマドンナ。
 ご覧になった方も多いと思う。清楚な感じと意志の強そうな感じが素敵な美人だ。
 この前の冬の合宿の賞品で小林さん著の「マジシャン誕生」を貰い、中に出てくるリングの技に興味を引かれていた。
 小林さんは腰までもある長髪で白いリボンに、白のイヤリングとネックレス、白のワンピースドレスで、カードから入った。観客に一枚引かせてそれを当てる。
 続いてエースのマジック。
 更に、観客に引いて貰ったカードにマジックインクでサインをして貰う。それをあらかじめ封じ手と称した小箱から取り出す。
 その前に私待望のリングのマジック。ほんの1メートルしか離れていないのに全く分からない。 旨いものだ。当然封じ手もあっさり小箱から取りだした。
 小林恵子さんに「文さんへ」等とサインをして貰い、今朝の予感はこっちが本物だとにこにこしながら熟年ミーハーは千駄ヶ谷をあとにした。マジシャンに手玉に取られているのも知らずに。

(記:97年2月2日)

Copyright (C) 1999-2003 Ricoh Co.,Ltd. All Rights Reserved.